読書三昧(仮免) 禹歩の痛痒アーカイブ

乱読中年、中途と半端を生きる

横山悠太『唐詩和訓 ひらがなで読む名詩100』(2019)

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唐詩百篇をひらがな七七調で和訳したアンソロジー。食べにくい乾物をうまく戻し調理して、みずみずしさを感じられるようにしてくれている、といったところの一冊。原詩、読み下し文、作品評もついていて、入門書としてゆったり読むのに十分なつくり。杜甫31、李白29、白居易29、韓愈11のラインナップ。

韓愈の「出門」:

出 門
もんのそと

長 安 百 萬 家
みやこにおおく いえならべども
出 門 無 所 之
もんからいでで ゆくあてもなし
豈 敢 尚 幽 獨
かくれてすむを このむでもなく
與 世 實 參 差
ただよのなかと あいいれぬだけ
古 人 雖 已 死
むかしのひとは しんではいても
書 上 有 其 辭
ほんにはのこる かれらのことば
開 卷 讀 且 想
それをひもとき みみをすませば
千 載 若 相 期
ちとせのへだて かんじぬほどに
出 門 各 有 道
ひとゆくみちは それぞれあれど
我 道 方 未 夷
わがゆくみちは たいらかならず
且 於 此 中 息
しばらくほんに ひたりてやすむ
天 命 不 吾 欺
てんめいわれを うらぎらぬゆえ


門(もん)を出(い)ず

長安百万(ちょうあんひゃくまん)の家(いえ)、
門(もん)を出(い)でて之(ゆ)く所無(ところな)し。
豈(あ)に敢(あえ)て幽独(ゆうどく)を尚(とおと)ばんや、
世(よ)と実(じつ)に参差(しんし)す。
古人已(こじんすで)に死(し)すと雖(いえど)も、
書上其(しょじょうそ)の辞有(じあ)り。
巻(かん)を開(ひら)いて読(よ)んで且(か)つ想(おも)う、
千載相(せんざいあ)い期(き)するが若(ごと)し。
門(もん)を出(い)ずれば各道有(おのおのみちあ)り、
我(わ)が道方(みちまさ)に未(いま)だ夷(い)ならず。
且(しばらく)く此(こ)の中(なか)に於(おい)いて息(いこ)う。
天命吾(てんめいわれ)を欺(あざむ)かず。


出門

長安百萬家
出門無所之
豈敢尚幽獨
與世實參差
古人雖已死
書上有其辭
開卷讀且想
千載若相期
出門各有道
我道方未夷
且於此中息
天命不吾欺


もんのそと

みやこにおおく いえならべども
もんからいでで ゆくあてもなし
かくれてすむを このむでもなく
ただよのなかと あいいれぬだけ
むかしのひとは しんではいても
ほんにはのこる かれらのことば
それをひもとき みみをすませば
ちとせのへだて かんじぬほどに
ひとゆくみちは それぞれあれど
わがゆくみちは たいらかならず
しばらくほんに ひたりてやすむ
てんめいわれを うらぎらぬゆえ

 

あまり気張ることなく、いろいろな文字の世界と味を楽しめる。

 

唐詩和訓 - 株式会社大修館書店

 

横山悠太
1981 -
杜甫
712 - 770
李白
701 - 762
白居易
772 - 846
韓愈
768 - 824