読書三昧(仮免) 禹歩の痛痒アーカイブ

乱読中年、中途と半端を生きる

野口米次郎「雀」( The Pilgrimage 1909『巡礼』 より )

一幽霊、
沈黙と影のなかから再び踊り出たもの、
前世の色彩と追憶をあさる猟人、
彼は同じ夢と人情を、ここに再び見出すことが出来るだらうか。
彼は生きる力の把持者、
彼は各瞬間に献身せるもの、
彼の一瞬間は人間の十年にも比較されるであらう………
各瞬間は彼を唆かし、慰め、驚かすに相違ない。
彼は神経の幽霊………
彼が呪詛ならば、
すべての心を以て呪詛するであらう。
彼が後悔ならば、
すべての体を投げて後悔するであらう。
ああ、私も彼と同様に、同じ生命の感動を味ひたいものだ。

( The Pilgrimage 1909『巡礼』 より )

野口米次郎
1875 - 1947
 
野口米次郎の詩 再興活動 No.038