読書三昧(仮免) 禹歩の痛痒アーカイブ

乱読中年、中途と半端を生きる

アルフレッド・ノース・ホワイトヘッド「象徴作用」(1927)その2

象徴作用(Symbolism)すなわち記号による体系化作用という視点から語られる組織論。 

社会的象徴作用は、二重の意味をもっている。プラグマティックな面からいえば、それは諸個人を特定の行動へ向かわせる方向づけを意味し、また理論的な面からいえば、それが象徴が、雑多な群衆を円滑に運転して共同社会にまで組織化する力をどうして獲得するか、ということの情緒的な附随物を伴う漠然たる究局的理由をも意味するのである。
国家と軍隊との対照は、この原理を例示している。国家は軍隊よりも、より錯雑した事態を処理しているのである。この意味で国家は、よりルーズな組織団体なのであり、その人口の大部分のひとびとに対して公共の象徴作用が効力をもつためには、ほとんど同一視しうる事態がしばしば反復される、ということに頼ることはできない。しかし規律ある軍団は、特定の限度内でさまざまに変わる諸事態においては、一つの単位として行動するように訓練されている。しかし人間生活の多くの部分は、このような軍隊的規律の及ぶ範囲よりは逸脱している。軍団というものは、ある一種類の仕事のためにだけ訓練されるのであり、その結果、自動的行為により多くの信頼が置かれ、究局的な根拠に対する訴えにはより少しの信頼しか置かれなくなる。訓練された兵隊は、号令を受けると自動的に行動するのである。兵隊は音響に反応しているのであって、観念というものを排除してしまっている。これは反射行動なのだ。(『象徴作用』p83)

反射行動が必要な領域と熟慮と構築の観念が必要な領域を分離して、組織とその構成を考える視点を持っておく。軍隊的規律内でとる行動と思考の抑制と、個人的な逸脱がより許されている場面での行動と思考のチャレンジを、なるべく混ぜない。

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ルフレッド・ノース・ホワイトヘッド
1861 - 1947
市井三郎
1922 - 1989