象徴作用によって存在しているものは実際には存在していないがゆえに誤謬と仲が良い。けれども存在していないからといってすべてを取り払うことも出来ない。事物に働きかける外的な強制力もある。
象徴作用と直接的知識とのあいだには、一つの大きい相違がある。直接的経験は誤謬を犯しえないのであって、諸君の経験したことは経験したに違いはない。しかし象徴作用は非常に誤りを犯しやすいのであり、ということの意味は、象徴作用がわれわれに想定せしめる事物が、実際にはこの世界に存在していないにもかかわらず、たんなる観念に過ぎないその事物に関して、象徴がさまざまな行動や感情、情緒、信念などを惹起しうるということである。直接的知識の結果としてわれわれが機能するやり方には、象徴作用が不可欠の因子として介在する、という主張をわたしはこれから展開しようと思う。高度に発達した有機体が可能となるのは、それの象徴的諸機能が、重要な問題に関する限りたいていは正当なものである、という条件が満たされる場合だけである。しかし人類が犯すさまざまな誤まちも、同じように象徴作用に派生している。それで人間性というものが依存している諸象徴を、理解しまた純化するということが、理性の遂行すべき任務となる。(『象徴作用』p16-17)
象徴作用は非常に誤りを犯しやすいが、それなしに人間の活動はない。言語、数、貨幣、国家、社会、組織、家族・・・。
目次:
象徴作用―その意味と機能
序文
第1章
1 象徴作用のさまざま
2 象徴作用と知覚
3 方法論について
4 象徴作用が誤謬を犯しうる
5 象徴作用の定義
6 活動としての経験
7 言語
8 提示的直接性
9 知覚的経験
10 知覚的経験における象徴的関連づけ
11 心的なものと物理的なもの
12 提示的直接性における感覚所与と空間との役割
13 客体化
第2章
1 因果的能動性に関するヒュームの見解
2 カントと因果的能動性
3 因果的能動性の直接的な知覚
4 因果的能動性の原始性
5 知覚の諸様態の交叉
6 位置限定
7 厳密な明確性と重要性との対照
8 結論
第3章
象徴作用のさまざまな有用性