ドイツの大学での初級ゼミナール用の教科書。論理学の教科書というよりも「論理的・意味論的観点からの哲学入門」の書ということで、分析哲学の枠組みから哲学史をふりかえっている哲学入門書として大変おもしろい。このテキストを使って講義してもらえたら、だいぶ満足できると思う。ちくま学芸文庫で本体1300円と価格的にも大変ありがたい。
概念が具体的対象でないことは確かである。それはしたがって、抽象的対象であるか、あるいはそもそも存在者ではなく、何かですらまったくないか(しかし何ものでもないものがありうるとはどういうことなのだろうか)のどちらかである。クラスや特に概念において生じるこうした難問を考えるだけで、多くの人々が言語表現――一般名辞――だけについて語ることを好む理由がわかる。こうした立場は「唯名論(Nominalismus; nominalism)」と呼ばれる。この考え方では、「名前」すなわち言語表現だけがあり、いわゆる「普遍」、すなわち名前が表わす一般者なるものはない。私たちはこうして、いわゆる普遍論争にかかわることになる。(第8章「一般名辞、概念、クラス」p163)
目次:
第1章 「論理学」とは何か
第2章 文、言明文、言明、判断
第3章 論理的含意と論理的真理―分析性とア・プリオリ性
第4章 矛盾律
第5章 伝統的論理学の基本性格―判断論と三段論法
第6章 単称文と一般文の構造に関する現代の考え方―論理的・意味論的形式と文法的形式
第7章 複合文
第8章 一般名辞、概念、クラス
第9章 単称名辞
第10章 同一性
第11章 存在
第12章 存在、否定、肯定
第13章 真理
第14章 必然性と可能性
エルンスト・トゥーゲンハット
1930 -
ウルズラ・ヴォルフ
1951 -
鈴木崇夫
1956 -
石川求
1958 -