読書三昧(仮免) 禹歩の痛痒アーカイブ

乱読中年、中途と半端を生きる

栃内新+左巻健男 (編著)『新しい高校生物の教科書 現代人のための高校理科』 (講談社ブルーバックス 2006)

科学は日々進歩しているため、最新の学説を取り込むほど内容は面白くなってくる。ただ、理解ができないほど難しいと困ってしまうのだが、本書は執筆者の努力と熱量とで、生物についての興味が持続し、ほぼ書かれている情報をそのまま享受することができる。最近の高校の生物は化学っぽい解説やセンサーや人工知能などと生命現象の比較なども可能になっていてとても面白い。フロッピーディスクWINDOWS95を半日かけてインストールしていた時代のさらに前に生物を勉強していた頃とは時代が違う。

コンピュータは、電気回路に電流を流したり、流さなかったりすることで、情報をデジタル信号として処理している。ニューロンも、これと同じように、刺激が強いときにはニューロンが続けて興奮し、興奮の頻度で刺激の大きさの情報を伝えている。
(中略)
ニューロンには、Na⁺(ナトリウムイオン)を受動輸送するナトリウムチャンネルとK⁺(カリウムイオン)を受動輸送するカリウムチャンネル、そして、ATPを用いて能動輸送するナトリウムポンプがある。こうした膜タンパク質を使って、Na⁺、K⁺を出し入れすることによって、先に説明した活動電位をつくり出し、「興奮」を起こしているのだ。
(第4章「行動のしくみと進化」4-1「情報を受けて伝える仕組み(感覚器と神経)」p199-200)

 

さらに本書では、自己と非自己の弁別と免疫系の世界の基礎情報についても教えてくれているので(第5章「ヒトのからだと病気・医療」5-1「からだの中の恒常性」)、今の時期は、アクチュアリティのある読書になると思う。


目次:
第1章 生命の誕生と進化
第2章 細胞の構造とエネルギー代謝
第3章 遺伝・生殖・発生
第4章 行動のしくみと進化
第5章 ヒトのからだと病気・医療
第6章 植物のからだと生殖
第7章 生態系のしくみ
第8章 生物学と地球の未来

 

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