読書三昧(仮免) 禹歩の痛痒アーカイブ

乱読中年、中途と半端を生きる

空海『即身成仏義』(加藤精一編 角川ソフィア文庫 ビギナーズ日本の思想 2013)

空海の思想の中心はやはり即身成仏。詳細な解説書を読む前に、原文読み下し文と簡易解説に触れておくほうが良いと思うので、角川ソフィア文庫のビギナーズ日本の思想シリーズを手にされることをすすめる。

【即身成仏の頌】
六大無礙にして常に瑜伽(ゆが)なり、体(たい)
四種曼荼各々離れず、相(そう)
三密加持すれば速疾に顕わる、用(ゆう)
重々帝網なるを即身と名づく。無礙(むげ)
法然に薩般若(さはんにゃ)を具足して、
心数(しんず)心王刹塵(せつじん)に過ぎたり、
各々五智無際智を具す、
円鏡力の故に実書覚智なり。成仏

「即身成仏」における重点は「成仏」ではなく「即身」。「生き仏」というようなイメージではなく、諸界に遍満している仏を感得すこと、宇宙の構成要素から組み上げられている己を明晰に認識すること、それが「成仏」という言葉が示す方向性で、その認識の強度に焦点を当てようとするのが「即身」の二字である。「重々帝網なるを即身と名づく」。この世界の関係性の精緻さを観じ、複雑で密接な結びつきのなかで交歓し舞踏していることを体現するそれぞれの心身を整えていこうと誘うラディカルで艶っぽいたくらみの道。

 

www.kadokawa.co.jp

空海
774-835
加藤精一
1936 -