読書三昧(仮免) 禹歩の痛痒アーカイブ

乱読中年、中途と半端を生きる

佐藤勝彦 監修『図解雑学 量子論』(ナツメ社 2001)

初歩の初歩、入門中の入門の書みたいな体裁をとっているにもかかわらず、具だくさん。しかもきっちりと味付けがしてあって、うまさを感じる。見開き2ページでひとつのトピックを扱っていて、右に図解、左に解説文で、数式が理解できないひとに向けても、しっかりとツボを押さえてくれている。今回3回目くらいの通読になるが、自分の量子論の理解がどの程度進んでいるかのチェックにもなって、ちょっと高まる。再視、再読は一回目よりも高まる。

 

要するに、ある地点にかたまっている波とは、マクロの視点ではほとんど粒と同じような姿になるということだ。実際、このようなかたまりの波は、ニュートン力学であつかえる粒と同じような動きになる。しかしミクロの視点では、波が相対的に大きくなって、波としての性質が表れてくるのだ。(4 何もかも決めきれない世界 「物質波の姿とは?」p142)

 

量子論では「完全に何もない状態」というのは許されない。というのも、量子論には不確定性原理があるが、ゼロでは状態が確定になってしまうからだ。つまり量子論的には、真空も揺らいでいる状態になる。(5 量子論はSFチック? 「ゼロ点振動」p186)

 

量子場のいちばんかじりやすそうな部分、いただきました。今回は不確定性の肯定的側面にはじめて触れさせてもらったような気がした。不確定であるが、それゆえにつねになにかがある世界、なにかがゆらぎ動いている場のイメージができはじめた。


これは、監修者とライターとイラストレーターの魅力がうまい具合にからみ合って、小さな本ならではのよさが埋め込まれている一冊。ふりかえりやすい入門書。

 

目次:
1 量子の世界へようこそ
2 光はジキルとハイド?
3 アトムを分解しよう
4 何もかも決めきれない世界
5 量子論はSFチック?
6 ミクロとマクロのドッキング

 

佐藤勝彦
1945 -