読書三昧(仮免) 禹歩の痛痒アーカイブ

乱読中年、中途と半端を生きる

新・世界現代詩文庫⑤ アウレリオ・アシアイン+鼓直+細野豊 編訳『現代メキシコ詩集』(土曜美術出版社 2004)

振り切れないなあ、と思って読んでいるうちに、けだるさにひたるという読み方に転換。ぬるめの炭酸をだらだら飲んでいるゆるくて安い無益なとらわれのない時間への感度を上げて読む。1919年生まれのアリ・チュマセーロから生まれの早い順に掲載されているようで、読み方の順番を変えれば、また違った印象にもなることに気づいてもいるが、それはまた今度の再読のときに期待として残しておく。編者でもあるアウレリオ・アシアインやコラル・ブラーチョ、フランシスコ・セゴビアなどはすがすがしさを感じさせる系統の詩人で、作品も相対的に優れているような気がするが、今回は脇役。

全体的には、記憶喪失気味のハイエナがメキシコの山やブッシュをうろついているような印象。とりあえずそれほど腹を空かしているわけではないが、じっとしていられないような様子で、知らないうちにうなり声が低くもれてしまっている気持ち悪さをおさえている抑制感がにじんでいるような作品が多い。けだるい小走りがずっとつづく。日が落ちて涼しくなったら茂みのなかで浅い眠りをねむる。大げさな狩りは行わない。

ルイス・イグナシオ・エルゲーラ(三角明子訳)

ポーン

これだけ。
盤上でポーンを動かす
他になし。
ポーンd4。
対戦者はなく。
倦怠が相手。
不確実性が相手。
懸念が相手。
無限が相手。
無が相手。

 

 

辺境というか周辺地帯で生きていることの余韻のようなものがなんとなく伝わる。


収録詩人 37名
アリ・チュマセーロ
ルヘン・ボニファス・ヌーニョ
ハイメ・サビーネス
トマス・セゴビア
エドゥアルド・リサルデ
ウラルメ・ゴンサーレス=デ=レオン
マルコ・アントニオ・モンテス=デ=オカ
ガブリエル・サイー
ヘラルド・デニー
ホセ・カルロス・ベセーラ
セルヒオ・モンドラゴン
ホセ・エミリオ・パチェーコ
オメーロ・アリディヒス
エルサ・クロス
アランシスコ・エルナンデス
アントニオ・デルトーロ
ダビー・ウエルタ
アンバル・バスト
アドルフォ・カスタニョン
コラル・ブラーチョ
アルベルト・フランコ
ホセ・ルイス・リバス
マヌエル・ウラシア
ファビオ・モラビト
ハイメ・モレーノ・ビリャレアル
カルメン・ボウリョーサ
ホルヘ・エスキンカ
フランシスコ・セゴビア
テディ・ロペス=ミルス
アルバ・フローレス
アウレリオ・アシアイン
アナ・ベレン・ロペス
エドゥアルド・バスケス=マルティン
ルイス・イグナシオ・エルゲーラ
フリオ・トルヒーリョ
ルイヒ・アマーラ
マリーア・バランダ

 

土曜美術出版社 新・世界現代詩文庫
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