読書三昧(仮免) 禹歩の痛痒アーカイブ

乱読中年、中途と半端を生きる

田村隆一の詩を読む〔一周目〕その4:全集4 『新世界より』(1990)~『灰色のノート』(1993)

全集4には4詩集が収録。
新世界より』(1990)
『ぼくの航海日誌』(1991)
ハミングバード』(1992)
『灰色のノート』(1993)

老年を迎えても相変わらずよく書く田村隆一。1990年代出版の作品のことばには、ぶっきらぼうな厳しさが入り込んできたような印象を受けた。

 

ぼくにとって現在は
白という色彩 現在を指で触れたかったら
ユトリロの油彩を見るがいい

白という色を生み出すために
ただそれだけのために
ぼくは詩を書く

一行の余白
その白
その断崖を飛びこえられるか

 

(『ぼくの航海日誌』1991収録 「二月 白」終結部)

 

地名、人名、作品名。名前の付いた白を生み出すにはキャンバス地のままではダメ。白紙のままではダメ。深淵としてのノイズを重ねて、不透明な白を生み出す。

 

田村隆一
1923 - 1998