読書三昧(仮免) 禹歩の痛痒アーカイブ

乱読中年、中途と半端を生きる

長橋賢吾『図解入門 よくわかる 最新 量子コンピュータの基本と仕組み』(秀和システム 2018)

計算力が高まれば世界は変わる。一般市民にとってはたぶんセキュリティの世界が変わることにいちばん影響がでてくるだろうか。量子コンピュータ量子力学の現象を応用したコンピュータのことで、並列計算によって古典的コンピュータの計算力を超えることが期待できる計算機として国家や企業の研究の対象となっている。近年、ブロックチェーンが非中央集権的システムということで注目をあび、仮想通貨の出現などによってより身近な存在となってきたが、量子コンピュータで従来型コンピュータの計算力を凌駕するようになった場合、ブロックチェーンのベースとなっている暗号技術が破られてしまうという問題が提起されている。予想では2027年。すぐ先の未来のことだ。そこではより高度な暗号化技術が開発されているだろうが、ひとたび運営開発側に身を置いた場合には、先端技術への終わりのない対応が待っている。おもしろいといえば面白いのだが、あまりにも展開が早すぎると距離をとって休みたくなるのも人情だ。何とか美味しいとこどりをしたいものだが下層開発者にそういい話は廻ってこない。

【他に関心を持った記述】
・自然コンピューティングのひとつの研究対象として紹介された粘菌型コンピューティング。アメーバの捕食行動を計算処理に応用するというもの(p86)
トポロジカル絶縁体マヨラナ粒子:「トポロジカル絶縁体マヨラナ粒子は温度については絶対零度にする必要がなく、超電導方式にくらべてノイズが少なく、安定した量子ビットがを実現する可能性があります」(p135)

マヨラナ粒子についての記述は、アガンベンの著作『実在とはなにか マヨラナの失踪』(講談社選書メチエ)を読もうかどうか迷っていた時に出会ったので、しっかり背中を押してくれたありがたさがあった。

目次:

第1章 量子コンピュータの現在 数式なしでわかる量子コンピュータ
第2章 量子コンピュータとは何か?
第3章 量子コンピュータが変える人工知能と仮想通貨
第4章 量子コンピュータの活用戦略

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