読書三昧(仮免) 禹歩の痛痒アーカイブ

乱読中年、中途と半端を生きる

西脇順三郎の詩を読む

筑摩現代文学大系33(1978刊行)で西脇順三郎を読んだ。

カラッとしてネバつきのない日本語ぽくない日本語。特にAmbarvaliaが日本近代詩の中に存在していることは、今になってもありがたい。乾した穀物のような感触の詩。

精霊の動脈が切れ 神のフィルムが切れ
枯れ果てた材木の中を通して夢見る精気の
手をとつて 唇の暗黒をさぐるとき
冬の花が延びて 岩を薫らし森を殺す
小鳥の首と宝石のたそがれに手をのばし
夢みるこの手にスミルナの夢がある
燃える薔薇の藪

 

馥郁タル火夫(部分)

 間断なく祝福せよ楓の樹にのぼらんとする水牛を!
 口蓋をたたいて我れを呼ぶ者あれば我れはひそかに去らんとする けれども又しても口中へ金貨を投ずるものあり 我れはどならんとすれども我れの声はあまりにアンジェリコの訪れにすぎない 跪きたれども永遠は余りにかまびすし

 意味を追うだけの読みからはすこし外れる望遠的なことばの体験。

 

Ambarvalia (1933)
旅人かえらず (1947)
近代の寓話 (1953) 抄
第三の神話 (1956) 抄
失われた時 (1960) 抄
豊穣の女神 (1962) 抄

西脇順三郎
1894 - 1982