読書三昧(仮免) 禹歩の痛痒アーカイブ

乱読中年、中途と半端を生きる

ポール・クローデルの戯曲『真昼に分かつ』(原書1906, 鈴木力衛・渡辺守章訳 1960, 1976 )神話的激しさをもつ劇

同時期に起こった作者クローデルの信仰の危機と恋愛の危機を起点として成立した劇作。男性三人女性一人の四角関係、神話的激しさを持ち、刺激は強い。


【脳内上演キャスト】
イゼ (ド・シーズの妻): 佐藤江梨子
メザ (後にイゼの恋人): 神木隆之介
ド・シーズ (イゼの夫): 松尾諭
アマルリック (後にイゼ情夫): 井浦新


【特徴的なセリフ】
イゼ(佐藤江梨子

でも、どうしろというの、アマリー、理屈ではどうにもならない、我慢できないのよ!
どうにも我慢できなくなる時があるの、あんまりよ、あんまりだわ、もうたくさん、もうとてもだめ、わたしはあまりにもひとりぼっち、ひき離されてしまった、ひきはなされてしまっているのよ、わたしの愛しているものから!

 メザ(神木隆之介

お願いだ!ぼくのなかで、かすかにふるえているものがある。
大きな罪を犯させないでくれ! きみにはわかっていない、きみもぼくもまさしく、
ぼくたち二人、今この瞬間に、地獄落ちの、破滅の淵にいるんだよ、ほんのわずかなことをするだけで、それでもうおしまいなのだ。

 ド・シーズ(松尾諭

手荒いよ、あんたは! 今もって、わたしはあんたのやり方になじめないな。
こんなふうに、一つのことにこだわる、大げさにする、あんたの病気だ! 人生においては軽ろみってものが必要ですよ!

 アマルリック井浦新

わたしの望むのはただ一つのこと。明晰に見る、
物事をあるがままに
しっかりと見る、
このほうがずっと素晴らしい、わたしがそうあってほしいと思う姿で見るのではない。わたしのすること、わたしがしなければならぬことをだ。

 

演劇だから当たり前だけれども、まあ、みんなよくしゃべる。そしてキャラが濃い。作者も相当激しい人なのだろう。

 

※『筑摩世界文学大系56』所収


ポール・クローデル
1868 - 1955
鈴木力衛
1911 - 1973
渡辺守章
1933 -