読書三昧(仮免) 禹歩の痛痒アーカイブ

乱読中年、中途と半端を生きる

仲正昌樹『現代哲学の最前線』(NHK出版新書 2020)具材が多くても味は荒れていない良質なガイド

読むことが職業とはいえ、よく読んでいる。そして基本的に自分を出さず、主要プレイヤーをフラットに紹介することを心がけている点に、教育者としての矜持がうかがえる。扱われている5つのテーマ、テーマごとの多くの理論家すべてに関心をもち、著作を覗いてみるようなことは、時間もかかるし、能力の問題もあるので難しそうだけれど、中長期的なブックガイドとしてたまに参照してみたくなる一冊になっている。ゴシック体の前後をつまみ食いという感覚で賞味することも可能。

本書を通読して、私が読んでおこうと思ったのはロバート・ノージックリバタリアンというと弱者に厳しいというイメージが出て来ることもあるだろうけれど、ハイエクもそうだったように、最小国家の方向でいかに平等と福祉を実現するかを問い続ける姿勢をもっている思索家もいる。ノージックもそのような人物の一人のようだ。ノージックの『アナーキー・国家・ユートピア』のコアとなる考えを概観した後、まとめとして次のように仲正昌樹は書いている。

ノージックは福祉や社会的協働を否定するわけではない。それらが、社会や国家の名で強制されることを問題としているのである。彼に言わせれば、国家による再分配の押し付けをやめれば、人々が本当の意味で自由に連帯し、同じ理想を持つ人同士で、その実現を目指した共同体を作ることが可能になる。( 第1章「正義論」p41 )

引用後半の「自由に連帯」してうまくいく社会というのは、あまりリアリティのある話ではないと思っているのだが、実際の著作でどの辺まで詰めて考えているのか、それとも理想として掲げているだけなのか、自分で確かめてみたい気分になっている(実際には、岩波書店から文庫で出たロールズの本が3冊くらい積読状態であるので、そちらを先によむことになりそう)。


目次:
第1章 正義論―公正な社会はいかにして根拠づけられるか?
第2章 承認論―我々はどのように「他者」と認め合えるか?
第3章 自然主義―自由意志は幻想にすぎないのか?
第4章 心の哲学―「心」はどこまで説明可能か?
第5章 新しい実在論―存在することをなぜ問い直すのか?

【付箋箇所】
41, 51, 57, 63, 66, 68, 70, 72, 91, 105, 119, 249, 262, 263

※第4章「心の哲学」はSEという私の職業柄、全般的に関心があったためこれといってピックアップするようなことがないため付箋なしとなっている。おもしろくないというわけではない。本書の中では個人的には「新しい実在論」について関心が低い。

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仲正昌樹
1963 -