読書三昧(仮免) 禹歩の痛痒アーカイブ

乱読中年、中途と半端を生きる

佐藤優『「日本」論 東西の”革命児”から考える』(角川書店 2018) 此岸指向 革命を控えるというラディカリズム

スクラップアンドビルドではなくストック活用。新規開発よりも修繕メンテナンス。革新というよりは保守。ユートピアに一挙に飛ばずに目の前のゴミを拾いながら歩いて進む。指摘されなければ知らないルターと日蓮の共通性を学ぶ。

時空を経て、お互いにはコミュニケーションを取らなかった日蓮とルターではありますが、危機の時代における危機認識はよく似ています。二人とも、人間の改造、変化が先決といいます。抽象的に変わるのではなく、人間の実態が変わることによって、社会が変わっていく。そして、社会が変わっていくことによって国家が変わっていくのだ、という考えです。
人間を変えることで国家を変えていく。あくまでもその方向性を追求すべきであって、革命という方向は極力避けるという考え方です。政治の革命ではなく人間の革命。二人にはともに、こういう傾向が認められるのです。(第三講「日本と革命」 p221-222 )

マルティン・ルターの『キリスト者の自由』と日蓮の『立正安国論』を読み解きながら現代社会への指針を引き出そうとしている一冊。著者の佐藤優さんをはじめ、引用登場する人物は信仰をもっている人が多いので、いくら此岸指向と言っても、無信仰の人間と思考回路に差が出て来るのは致し方ないところではある。無信仰の人間が無意識に信仰している価値体系のようなもののなかにあるユートピア願望・変革願望については、信仰をもっている人の発言動向も参考にしながら自分で確かめていくほかはない。


【付箋箇所】
39, 87, 89, 91, 92, 95, 148, 171, 183, 185, 207, 214, 216, 221, 223, 228, 237

 

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佐藤優
1960 -
マルティン・ルター
1483 - 1546
日蓮
1222 - 1282