読書三昧(仮免) 禹歩の痛痒アーカイブ

乱読中年、中途と半端を生きる

マルティン・ハイデッガー『カントと形而上学の問題』(原書 1925-26, 1929, 1951 理想社ハイデッガー選集19 木場深定 訳 1967) 人間の本質的有限性をめぐっての考察

存在と時間』で論じられる計画であった時間性の問題について扱った講義録。カッシーラーによってカントを自分の考えに引きよせすぎと批判されて、後にその批判を受け入れているという一冊。逆にハイデッガーの方向性というものはよく出ているのかもしれない。人間の本質として有限性が強く押し出されているところが興味深く読めた。

感官とは有限な直観を意味する。感官の形式は純粋受容である。内感は「外から」ではなく、自己から感受する。内的触発は純粋受容において純粋自己に起因しなければならない。換言すれば、それは自己性そのものの本質において形成され、従ってこの自己性それ自身を始めて構成するのでなければならない。純粋自己触発は有限な自己そのものの超越的根源構造を与える。それ故に、心性というものがあって、それが他のものに伍してそれ自身としても何かを自らに関係づけて自己定立を行うというようなことでは断じてなく、むしろこの「自己から出て……に向かい、また自己へ帰る」ことがまさしく始めて有限な自己としての心性の心性性格を構成するのである。
しかもこれによって、純粋自己触発としての時間は純粋統覚と「並んで」「心性のうちに」現われるのではなく、自己性の可能性の根拠として純粋統覚のうちにすでに在し、このようにして心性を始めて心性たらしめる、ということが一挙にして明らかになる。
(中略)
時間と「私は思惟する」とはもはや合一しがたい異種的なものとして互いに対立せず、両者は同一のものである。
(第三章 「形而上学の基礎づけの根源性」第三四節 「純粋自己触発としての時間と自己の時間性格」p204-205 太字は実際は傍点)

 

カントもデカルトも読むことは読んでいるけれど、時間と思惟は同一というのははじめての教えかも知れない。ハイデッガー印の教え。

 

目次:

序論 研究の主題とその構成
純粋理性批判形而上学の基礎づけとして解釈することによる基礎存在論の理念の解明

第一章 形而上学の基礎づけの着始

第一節 形而上学の伝統的概念
第二節 伝統的形而上学の基礎づけの着始
第三節 「純粋理性批判」としての形而上学の基礎づけ

第二章 形而上学の基礎づけの遂行
A 形而上学の基礎づけの遂行のための遡行次元の性格づけ
I 根源領野の本質的諸性格
第四節 認識一般の本質
第五節 認識の有限性の本質
第六節 形而上学の基礎づけの源拠
II 根源開示の仕方
第七節 存在論の基礎づけの諸段階の予描
第八節 根源開示の方法
B 存在論の内的可能性の投企の遂行の諸段階
基礎づけの第一段階 純粋認識の本質要素
a 有限認識における純粋直観
第九節 純粋直観としての空間および時間の開明
第一〇節 普遍的純粋直観としての時間
b 有限認識における純粋思惟
第一一節 純粋悟性概念(想念)
第一二節 存在論的述語としての想念(範疇)
基礎づけの第二段階 純粋認識の本質統一
第一三節 純粋認識の本質統一への問い
第一四節 存在論的綜合
第一五節 範疇問題と超越的論理学の役割
基礎づけの第三段階 存在論的綜合の本質統一の内的可能性
第一六節 超越的演繹の根本意図としての有限理性の超越の開明
第一七節 超越的演繹の二つの途
a 第一の途
b 第二の途
第一八節 超越的演繹の外的形式
基礎づけの第四段階 存在論的認識の内的可能性の基礎
第一九節 超越と感性化
第二〇節 形像と図式
第二一節 図式と図式-形像
第二二節 超越的図式性
第二三節 図式性と包摂
基礎づけの第五段階 存在論的認識の完全な本質規定
第二四節 超越の完全な本質規定としての最高綜合原則
第二五節 超越と一般形而上学の基礎づけ

第三章 形而上学の基礎づけの根源性
A 基礎づけにおいて定置された基礎の明確な性格づけ
第二六節 存在論的認識の形成の中間項としての超越的構想力
第二七節 第三の根本能力としての超越的構想力
B 二つの幹の根としての超越的構想力
第二八節 超越的構想力と純粋直観
第二九節 超越的構想力と理論理性
第三〇節 超越的構想力と実践理性
第三一節 定置された基礎の根源性と超越的構想力からのカントの退避
C 超越的構想力と人間の純粋理性の問題
第三二節 超越的構想力とその時間への関係
第三三節 超越的構想力の内的時間性格
a 純粋覚知としての純粋綜合
b 純粋再生としての純粋綜合
c 純粋再認としての純粋綜合
第三四節 純粋自己触発としての時間と自己の時間性格
第三五節 定置された基礎の根源性と形而上学の問題

第四章 形而上学の基礎づけの反復
A 人間学における形而上学の基礎づけ
第三六節 定置された基礎とカントによる形而上学の基礎づけの成果
第三七節 哲学的人間学の理念
第三八節 人間の本質への問いとカントによる基礎づけの本来の成果
B 人間における有限性の問題と現存在の形而上学
第三九節 人間における有限性の可能的規定の問題
第四〇節 人間における有限性の問題への途としての存在の問いの根源的論明
第四一節 存在理解と人間における現存在
C 基礎存在論としての現存在の形而上学
第四二節 基礎存在論の理念
第四三節 基礎存在論の着始と行程
第四四節 基礎存在論の目標
第四五節 基礎存在論の理念と純粋理性批判

 

【付箋箇所】
28, 37, 46, 96, 138, 146, 205, 207, 209, 212, 213, 246, 251, 255, 260

 

マルティン・ハイデッガー
1889 - 1976
木場深定
1907 - 1999