読書三昧(仮免) 禹歩の痛痒アーカイブ

乱読中年、中途と半端を生きる

山内得立『随眠の哲学』(岩波書店 1993, オンデマンド版 2014)レンマ学の始祖、最後の著作。排中律の超克を志向する。

ずいめんのてつがく、随眠とは煩悩のこと。

拙著『ロゴスとレンマ』に於いて展開したように、東洋的無は決してロゴスの立場に立つものではない。それはロゴス的に肯定に対する否定ではなく、肯定を否定するとともに、否定を否定するものであった。それは肯定でないと共にまた否定でもあり得ない。それ故に即ち、否定であり同時に肯定でもあるものであった。
然らばそれは如何なるものであるか。龍樹はそこから「中論」を展開したが、我々はそう一足とびに中間的なるものをひきだすことはできない。その前に、この論理が如何なる生活を有するかを、とくと反省して見なければならぬ。
(前篇 存在の根拠の問題 七「存在の根拠たる無」p60-61 )

 

「存在の根拠たる無」は単なる否定ではなく否定の否定を通じてものこる存在の根拠となりうる場のようなもの、場のような論理。東洋思想本流の鎌田茂雄の大乗仏教観では生成論は領域外とされていたが、フッサール現象学から始まった山内得立は生成論の領域にも立ち入っている。どちらが正しいか、というよりも、どちらがどの領域で有益かという方向性で見ていったほうがとりあえず得るものは多いだろう。というくらいの感覚でいろいろ読んでいる最中。


【付箋箇所 1993年版】
5, 9, 16, 36, 42, 47, 60, 67, 86, 99, 107, 121, 131, 133, 138, 144, 165, 167, 173, 196, 209, 217

 

目次:
前篇 存在の根拠の問題
中篇 個物と無的一般者の問題
後篇 即非の論理

随眠の哲学 - 岩波書店

随眠の哲学(オンデマンド版) - 岩波書店

 

山内得立
1890 - 1982