『普遍論争』でもそうであったが、山内志朗の哲学の解説書は私的な表出が多くて、学問的に正統かどうかというところで考えると、すこし心配になったりもする。一般的なイメージとは少し違った対象が出てくるので、自分自身でもっと確認してみなくてはならないという思いがすこし出てくる。だから初学者にとっての導入としては、逆にいい書き方なのかもしれない。私も自分で調べてみようという関心をもたせてくれる。
本書で語られるライプニッツも、『モナドロジー』などを実際に読んで感じるライプニッツのイメージとはかなり異なる。「自分とは謎である」ということをライプニッツの著作から導き出してきて、それを一般書籍に書きしるす著者の気質は、おおよそ学者的なものではなくて、どちらかといえばひとり哲学書に向き合う独学の人という印象の方が強い。だから悪いというのではなく、どちらかと言えば親しみが持てる解説書だ。途上に立つ人のたたずまいが温かい。
感情は微分的なのもだ。変化があるときにのみ、ある感情の存在が気づかれるということだ。
(Ⅱ 個体性をめぐって 「モナドと強度」p72)
【付箋箇所】
15, 37, 71, 72, 79, 101
目次:
Ⅰ モナドの哲学
ライプニッツの時代
<自分>という謎
モナドの思想
孤独なモナド、夢みるモナド
Ⅱ 個体性をめぐって
無差別の不可能性
モナドの絆
モナド相互の関係と交通
モナドと強度
モナドの内なる無限性
Ⅲ <自分>の唯一性
<今・ここ>にあること
二種類の唯一性
世界にたったひとりの<自分>
ゴットフリート・ヴィルヘルム・ライプニッツ
1646 - 1716
山内志朗
1957 -