読書三昧(仮免) 禹歩の痛痒アーカイブ

乱読中年、中途と半端を生きる

【お風呂でロールズ】00.読書資料 2020年刊行の岩波現代文庫のジョン・ロールズ本、三冊

自由と平等を守り保つのがおそらく正義。しかしながら、自由と平等は相性があまりよくない。平等も、何時の誰の立場のどの部分どの範囲における平等かということで、定義も評価も変わってくる。徴税と再分配を司る国家行政運営部門にも取り分があり、そこが一番の受益者になっている可能性も否定できない。それでも全部なくして別の形態をとるということもできないので、その地域と時代に合わせて微調整していくほかないものなんだと思う。微調整にも時代と地域にあったものと基本線の攻防があり、基本線に関しても党派的な争いがあり、ロールズは基本線部分の一主流派の重鎮ということになるのだと思う。

個人的にはまあまあの自由と平等が実現できていれば、闘争のコスト払う必要ないんじゃないのくらいに思っているノンポリコンサバに分類されると思っている。だからこそ、闘争のコストのなかから益を引っ張り出そうとしている人に出会うとちょっと身構える。ロールズはどうやら中道、中庸を狙っているような思想家っぽいので、気張らずちょっとひたってみることにした。

湯舟に浸かりながらの政治哲学受講なので、世間的には何の益も出ない行為だけれど、個人の身体と精神の健康増強に何らかの効果が出ればいいかな、と思いながら一、二ヶ月過ごしてみる。

こちら側からの一方的な裸の付き合い。一万円を切るテキスト代と、ちょっと余分に発生する水道光熱費で実行する知的遊興と長時間入浴。

 


【お風呂でロールズ、読書対象】

ロールズ『政治哲学史講義Ⅰ』(原書 2007, 岩波書店 2011, 岩波現代文庫 2020 )
ロールズ『政治哲学史講義Ⅱ』(原書 2007, 岩波書店 2011, 岩波現代文庫 2020 )
ロールズ『公正としての正義 再説』(原書 2001, 岩波書店 2004, 岩波現代文庫 2020 )

【個別目次】

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ロールズ『政治哲学史講義Ⅰ』(原書 2007, 岩波書店 2011, 岩波現代文庫 2020 )
※サミュエル・フリーマン編, 訳:齋藤純一, 佐藤正志, 山岡龍一, 谷澤正嗣, 髙山裕二, 小田川大典

序論――政治哲学についての見解
 第一節 政治哲学をめぐる四つの問い
 第二節 政治哲学の四つの役割
 第三節 リベラリズムの主要な観念――その源泉と内容
 第四節 リベラリズムの中心テーゼ
 第五節 初期状況


ホッブズ
講義Ⅰ ホッブズの世俗的道徳主義と社会契約の役割
 第一節 序 論
 第二節 ホッブズの世俗的道徳主義
 第三節 自然状態と社会契約の解釈
 補遺A 自然状態を不安定にする人間本性の特徴(ハンドアウト
 補遺B
 補遺C 寛大な本性の理念に関連した箇所
講義Ⅱ 人間本性と自然状態
 第一節 はじめに
 第二節 人間本性の主要な特徴
 第三節 ホッブズの命題のための議論
 補遺A 自然状態→戦争状態というホッブズの主張のアウトライン(ハンドアウト
講義Ⅲ 実践的推論についてのホッブズの説明
 第一節 理に適っていることと合理的であること
 第二節 市民和合の理に適った条項の合理的基礎
 補遺A ホッブズにおいて道徳的義務は存在するかどうか
 補遺B ホッブズ自然法――『リヴァイアサン』第一四 ― 一五章
講義Ⅳ 主権者の役割と権力
 ホッブズと立憲デモクラシーについての結語
 補遺A 主権者の役割と権力(ハンドアウト
 補遺B 『市民論』と『リヴァイアサン』の対照について――主権者の再- 制度化
補遺 ホッブズ索引


ロック
講義Ⅰ ロックの自然法の教義
 第一節 序 言
 第二節 自然法の意味
 第三節 根本的自然法
 第四節 平等の状態としての自然状態
 第五節 根本的自然法の内容
 第六節 自然権の基礎としての根本的自然法
講義Ⅱ 正統な体制に関するロックの解釈
 第一節 混合政体下における抵抗
 第二節 正統性に関するロックの基本的な論点
 第三節 正統な政治体制をめぐるロックの基準
 第四節 個々人の政治的責務
 第五節 憲法制定権力と政府の解体
講義Ⅲ 所有権と階級国家
 第一節 問題の提示
 第二節 問題の背景
 第三節 ロックによるフィルマーへの返答Ⅰ――第四章
 第四節 ロックによるフィルマーへの返答Ⅱ――第五章
 第五節 階級国家という問題
 第六節 階級国家の起源に合わせた物語


ヒューム
講義Ⅰ 「原初契約について」
 第一節 序 言
 第二節 ロックの社会契約に対するヒュームの批判
講義Ⅱ 効用、正義、そして賢明な観察者
 第一節 効用の原理についての所見
 第二節 正義という人為的徳
 第三節 賢明な観察者


ルソー
講義Ⅰ 社会契約――その問題
 第一節 序 論
 第二節 政治社会前史の諸段階
 第三節 政治社会と政治的権威の段階
 第四節 社会契約との関連
 補遺A ルソー――人間本性の自然な善性の教義
 補遺B
講義Ⅱ 社会契約――諸仮定と一般意志(一)
 第一節 序 論
 第二節 社会契約
 第三節 一般意志
講義Ⅲ 一般意志(二)と安定性の問題
 第一節 一般意志の観点
 第二節 一般意志――法の支配、正義、平等
 第三節 一般意志と道徳的・政治的自由
 第四節 一般意志と安定性
 第五節 自由と社会契約
 第六節 ルソーの平等に関する諸観念――どの点に特色があるか
 
 

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ロールズ『政治哲学史講義Ⅱ』(原書 2007, 岩波書店 2011, 岩波現代文庫 2020 )
※サミュエル・フリーマン編, 訳:齋藤純一, 佐藤正志, 山岡龍一, 谷澤正嗣, 髙山裕二, 小田川大典

ミル
講義Ⅰ 効用についてのミルの考え方
 第一節 序言――ジョン・ステュアート・ミル
 第二節 ミルの功利主義の一つの読み方
 第三節 究極目的としての幸福
 第四節 明確な選好の基準
 第五節 明確な選好の基準についてのさらなるコメント
 第六節 ミルの根底にある心理学
講義Ⅱ 正義についてのミルの説明
 第一節 ミルに対する私たちのアプローチ
 第二節 ミルによる正義の説明
 第三節 道徳における正義の位置
 第四節 ミルにおける道徳的権利の特徴
 第五節 ミルの二面的基準
 第六節 他者と結びつこうとする欲求
講義Ⅲ 自由原理
 第一節 『自由論』(一八五九年)の問題
 第二節 ミルの原理についての予備的な論点
 第三節 ミルの述べる自由原理
 第四節 自然権(抽象的権利)について
 結 論
講義Ⅳ 全体として見たミルの教説
 第一節 序 論
 第二節 ミルの教説の枠組み
 第三節 人類の恒久的利益の最初の二つ
 第四節 他の二つの恒久的利益
 第五節 明確な選好の基準との関係
 第六節 個性との関係
 第七節 卓越主義的な価値の位置
 補遺 ミルの社会理論についての意見


マルクス
講義Ⅰ 社会システムとしての資本主義に関するマルクスの見解
 第一節 はじめに
 第二節 社会システムとしての資本主義のいくつかの特徴
 第三節 労働価値説
 補 遺
講義Ⅱ 権利と正義についてのマルクスの構想
 第一節 正義についてのマルクスの見解におけるパラドックス
 第二節 法律的構想としての正義
 第三節 マルクスは資本主義を不正義として非難している
 第四節 分配についての限界生産性理論との関係
 第五節 価格のもつ配分的役割と分配的役割
講義Ⅲ マルクスの理想――自由に連合した生産者たちの社会
 第一節 正義についてのマルクスの考えは一貫しているか
 第二節 なぜマルクスは正義についての考えを明示的に議論しないのか
 第三節 イデオロギー意識の消滅
 第四節 疎外のない社会
 第五節 搾取の不在
 第六節 完全な共産主義――社会主義の初期の欠陥の克服
 第七節 完全な共産主義――分業の克服
 第八節 共産主義の高次の段階とは正義を超えた社会なのか
 むすび


補遺
ヘンリー・シジウィック四講
第一講 シジウィック『倫理学の方法』
 第一節 はじめに
 第二節 『倫理学の方法』の議論の構造
第二講 正義と古典的効用原理についてのシジウィックの見解
 第一節 正義についてのシジウィックの説明
 第二節 古典的効用原理についての説明
 第三節 効用の個人間比較(IP比較)についてのコメント
 第四節 合理的な倫理学の方法の第一原理として見た場合の効用原理の特徴
 第五節 説明のための事例としての自然的自由に対する批判
 第六節 効用原理の定義についての補足
第三講 シジウィックの功利主義
 第一節 功利主義についての序論
 第二節 古典的効用原理についての説明(シジウィック)
 第三節 効用の個人間比較についてのいくつかのポイント
 第四節 個人間比較の十分な測定単位にとっての哲学的な制約
 第五節 最大多数の最大幸福、ならびに総効用最大化説と平均効用最大化説の対立について
 第六節 むすび
補 遺 基数的な個人間比較について
第四講 功利主義の要約

ジョゼフ・バトラー五講
第一講 人間本性の道徳的な構成原理
 第一節 序論――バトラーの生涯(一六九二―一七五二年)、作品、ねらい
 第二節 バトラーの敵対者
 第三節 人間本性の道徳的な構成原理
第二講 良心の本性と権威
 第一節 序 論
 第二節 私たちの道徳的能力の特徴
 第三節 良心の権威についてのバトラーの議論の概要――第二説教  第四節 良心の権威についてのバトラーの議論の要約
第三講 情念の有機的組織
 第一節 序 論
 第二節 バトラーの方法
 第三節 同情の役割――人間の社会的本性の一部としての
第四講 利己主義に対するバトラーの反論
 第一節 序 論
 第二節 快楽主義的利己主義に対するバトラーの異論
第五講 良心と自己愛の間に想定される葛藤
 第一節 序 論
 第二節 バトラーの議論が首尾一貫してないとみなされる理由――良心と自己愛について
 第三節 バトラーの道徳的心理学のいくつかの原理
 補遺 バトラーについての補足事項


講義概要


訳者あとがき
岩波現代文庫版訳者あとがき

 

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ロールズ『公正としての正義 再説』(原書 2001, 岩波書店 2004, 岩波現代文庫 2020 )
※エリン・ケリー 編 , 訳:田中成明, 亀本洋, 平井亮輔

第一部 基礎的諸観念
 1 政治哲学の四つの役割
 2 公正な協働システムとしての社会
 3 秩序だった社会の観念
 4 基本構造の観念
 5 われわれの探究の諸限定
 6 原初状態の観念
 7 自由で平等な人格の観念
 8 基礎的諸観念の関係
 9 公共的正当化の観念
 10 反省的均衡の観念
 11 重なり合うコンセンサスの観念


第二部 正義の原理
 12 三つの基本的な要点
 13 正義の二原理
 14 分配的正義の問題
 15 主題としての基本構造――第一種類の理由
 16 主題としての基本構造――第二種類の理由
 17 誰が最も不利な状況にあるのか
 18 格差原理――その意味
 19 反例による異論
 20 正統な期待、権原、功績
 21 生まれつきの才能を共同資産とみる見解について
 22 分配的正義と功績についての総括


第三部 原初状態からの議論
 23 原初状態――その構成
 24 正義の環境
 25 形式的な諸制約と無知のヴェール
 26 公共的理性の観念
 27 第一の基本的比較
 28 議論の構造とマキシミン・ルール
 29 第三条件を強調する議論
 30 基本的諸自由の優先性
 31 不確実性への嫌悪に関する異論
 32 平等な基本的諸自由再訪
 33 第二条件を強調する議論
 34 第二の基本的比較――序論
 35 公知性に属する諸根拠
 36 互恵性に属する諸根拠
 37 安定性に属する諸根拠
 38 制限つき効用原理に反対する諸根拠
 39 平等についてのコメント
 40 結語


第四部 正義に適った基本構造の諸制度
 41 財産私有型民主制――序論
 42 政体間の幾つかの基本的対比
 43 公正としての正義における善の諸観念
 44 立憲民主制対手続的民主制
 45 平等な政治的諸自由の公正な価値
 46 その他の基本的諸自由の公正な価値の否認
 47 政治的リベラリズムと包括的リベラリズム―― 一つの対比
 48 人頭税と自由の優先性についての覚書
 49 財産私有型民主制の経済制度
 50 基本制度としての家族
 51 基本善(財)の指数の柔軟性
 52 マルクスリベラリズム批判に取り組む
 53 余暇時間についての手短なコメント


第五部 安定性の問題
 54 政治的なものの領域
 55 安定性の問題
 56 公正としての正義は間違った仕方で政治的か
 57 政治的リベラリズムはいかにして可能か
 58 重なり合うコンセンサスはユートピア的ではない
 59 道理に適った道徳心理学
 60 政治社会の善


ジョン・ロールズ
1921 - 2002