読書三昧(仮免) 禹歩の痛痒アーカイブ

乱読中年、中途と半端を生きる

内山淳一『めでたし めずらし 瑞獣 珍獣』(PIE International 2020)日本の伝統美の技術に酔う

神獣と吉祥を象徴する動物たちをモチーフにした日本画と工芸品を多数紹介してくれる一冊。日本語英語併記のバイリンガル本(英題はAuspicious Animals - The Art of Good Omens)。めでたい動物たちと日本の職人たちの優れた技術を見ることで気分がなんとなく上がってくる。また、日本画に慣れると、影のない金泥や金箔の背景を見ているだけで、異界に誘われるようで、こちらも非日常的な感覚がわき上がり、モヤモヤした時に眺めると、ほんわかした気分にさせてくれる。根付や着物の突出したデザインと技術には少しクラクラする。

収録図版240点のうち、一番多く取り上げられているのは円山応挙。圧倒的印象。単独紹介本でも取り上げられることの少ない作品もあり、応挙好きとしては見応え十分だった。ついで、葛飾北斎伊藤若冲俵屋宗達とつづいている感じで、企画自体にピンと来なくても、一般的なチョイスではお目にかかることのできないような作品に出会えるので、結構おっぅと思うことが多い。たとえば兔カテゴリーの葛飾北斎「宝珠を搗く月兔」、鶴カテゴリーの伊藤若冲「松梅孤鶴図」など。

図版は見応え十分、バイリンガル本ということでスペースが限られていることもあろうが、文章は面白そうな雰囲気を感じたので、もう少し分量があってもよかったか。

著者の好きな動物は、うさぎと犬。応挙も好きであろう、うさぎと犬。

翻訳校正者はSumishi Aran and Jeannine Mulnar。

pie.co.jp

 

内山淳一
1959 -