文選(もんぜん)。紀元前二世紀から約八百年に及ぶ中国詩文の精華。科挙の詩文制作の規範とされたこの詩文集は、収録作品についても多くは高級官僚の手になるもので、基本的に政治についての言及が内容となっている。かりに今の国政や地方行政に携わる人たちが詩歌を読むことが当たり前のことになったとしたら、果たしてどのようなことが詠われるのか? 公表できるようなものになるのかどうか、試してもらってみたい気にもなる。
漫漫方與
回回洪覆
何類不繁
何生不茂
物極其性
人永其壽漫漫たる方與(ほうよ)
回回たる洪覆(こうふう)
何れの類か繁らざらん
何れの生か茂らざらん
物は其の性を極め
人は其の寿を永くす
補亡詩六首(束晢)のうち第五「崇丘」の第二章。ひろい世界におおいに繁栄することを謳った慶賀の詩。今の世で、なかなかこうストレートに繁栄の歓びのみを詠うことは難しいのではないだろうか? 成長の限界ということも言われはじめてから50年近くが経とうとし、日本国内では人口減少ももうはじまっている。うまく縮小していくことがもしかすると一番の願いになるかもしれない時代。その時代に何をどう詠えば美となるのか? 美なんて言っている場合ではないのか? 美が明確でないと醜もよく分からなくなってしまいそうな気がするので、基本的な美の路線が見えてくるとありがたいのだけれど・・・
【付箋箇所】
35, 39, 76, 92, 160, 232, 332, 375, 402, 411