読書三昧(仮免) 禹歩の痛痒アーカイブ

乱読中年、中途と半端を生きる

【お風呂でロールズ】03.『政治哲学史講義』功利主義を講じる際に出てきた人間タイプの表現に関してのメモ

ロールズがシジウィックの功利主義について考察している際に、否定的というか、強いられたとすれば嫌悪感をもよおすであろう人間のタイプのとして提示されたものに、逆に、自主的には望むべき人間のタイプなのではないのかと強く感じたために、ロック、ヒューム、ルソー、ミル、マルクスの講義の感想まとめをスキップして、先行でメモ。

自分が志向すべきタイプの人間だと思った表現がこちら。


少ない社会的資源でも容易に幸せになれるような単純な種類の人々
(『ロールズ 政治哲学史講義Ⅱ』補遺 シジウィック 第3講 シジウィックの功利主義 補遺「基数的な個人間比較について」 p831 )

 

有限な社会的資源、更には有限な環境資源のなかで、これから先も人間が生きていくには、少ない資源で容易に幸せになれることのほうがむしろ重要ではないかと私は思った。少ない資源で、直ぐに、そして長く幸せになれる単純さこそ評価されるべきで、そこに到達することのほうが今の世界では難しいと、私などは感じている。

吾唯知足 われただたるをしる

悟りプラス幸福。

 

たとえば、ガス給湯器で160リットルのお湯を沸かして1時間風呂に入って感じる幸せと、160ミリリットルの白湯を飲んで感じる幸せの質と量が完全に代替可能であったら、160ミリリットルの白湯のほうが、地球にもこれから先何代続くかわからない未来の後続世代にとっても、断然やさしくて推奨されるはず。ただ、どうやっても同じ満足感にならないし、比較自体も難しいので、いろいろ妥当とされる範囲で楽しむ。できるだけシンプルに、ひとにも自分にも不安をもたらすことなく。未来人からはそれでも怒られるかもしれないが・・・

 

 

www.iwanami.co.jp


ロールズ『政治哲学史講義Ⅱ』(原書 2007, 岩波書店 2011, 岩波現代文庫 2020 )
※サミュエル・フリーマン編, 訳:齋藤純一, 佐藤正志, 山岡龍一, 谷澤正嗣, 髙山裕二, 小田川大典

 

補遺
ヘンリー・シジウィック四講
第一講 シジウィック『倫理学の方法』
 第一節 はじめに
 第二節 『倫理学の方法』の議論の構造
第二講 正義と古典的効用原理についてのシジウィックの見解
 第一節 正義についてのシジウィックの説明
 第二節 古典的効用原理についての説明
 第三節 効用の個人間比較(IP比較)についてのコメント
 第四節 合理的な倫理学の方法の第一原理として見た場合の効用原理の特徴
 第五節 説明のための事例としての自然的自由に対する批判
 第六節 効用原理の定義についての補足
第三講 シジウィックの功利主義
 第一節 功利主義についての序論
 第二節 古典的効用原理についての説明(シジウィック)
 第三節 効用の個人間比較についてのいくつかのポイント
 第四節 個人間比較の十分な測定単位にとっての哲学的な制約
 第五節 最大多数の最大幸福、ならびに総効用最大化説と平均効用最大化説の対立について
 第六節 むすび
補 遺 基数的な個人間比較について
第四講 功利主義の要約

 

ジョン・ロールズ
1921 - 2002
ヘンリー・シジウィック
1838 - 1900