敵と思うものが明確にいた。社会学者としての業績よりも、敵と思うものに対しての自身の立場の表明と抵抗こそが重要であった人生ではなかったのかなと思わせる、本人曰く「自伝ではない」、一個人の人生の社会学的資料集成であり、死の時まで推敲を重ねていたブルデュー最後の著作。
対エリート
対哲学
対構造主義、
対フーコー
対フランス
対伝統
対制度
読者には、自分の生きた生のデータを見て、よりよく生きることを引き出してくれることを、ブルデューは望んでいた。実現するには難しい要求かもしれないと思いながら読んだ。
しかし、ブルデューよりもよりよく生きることって、何だろう? ことさら闘わないということについてなら教えられなくてもできているけれど、おそらくブルデューとは異なる「土着のハビトゥス」のもとに習慣として無意識的に選択しているだけなので、個人の生き方の問題として、よりよいより悪いと比較するまでにはいたらないことであろう。後々、何らかの事象でハッと気づかせられることが出てきたら、それがブルデューが望んでいた方向にある何かなのだろう。
わたしは少しずつ、特に他者のまなざしをとおして、自分のハビトゥスの諸特性を発見した。男の誇りと見栄にこだわる傾向、いつも半分はお芝居だが明らかな喧嘩好き、「ささいな」ことで憤慨する傾向、いま考えると、これらはわたしの出身地方の文化的特性に結びついているように思われる。
(Ⅲ 分裂ハビトゥス 「土着のハビトゥス」 p141 )
ピエール・ブルデューは1930年生まれ。ジャック・デリダやミシェル・セール、、ジャン=リュック・ゴダールなどと同年生まれ。スペインのバスク州に隣接するフランスのピレネー=アトランティック県のダンガン村生まれ。小作人の家系から下級公務員と分類されていた郵便局員となった父のもとに生まれ、学業優秀なことからエリート校に進んでいった経歴の持ち主。
【付箋箇所】
25, 98, 109, 120, 121, 135, 141, 166, 175
目次:
刊行者の注
はじめに
Ⅰ 1950年代の哲学界の状況
閉ざされた空間
科学史・科学哲学者たち
哲学と社会科学
精神分析学と社会学
フランスの大学とブルデュー学派の集合的作業
Ⅱ 哲学から社会学へ
サルトル
カンギレーム
社会学の状況
アロンとの関係
社会学=パリア学問
兵 役
民族学と哲学のあいだ
社会学と民族学
レヴィ=ストロース
民族学的・社会学的調査
コロ半島
ベアルン
「蝶々的」 気質
アンチ・オール / キャッチ・オール
研究の魅惑
取り返しのつかない不幸
アメリカ社会学への抵抗
哲学とのたたかい
フーコー
Ⅲ 分裂ハビトゥス
父
母
土着のハビトゥス
寄宿舎生活
二分された世界
分裂ハビトゥス
知識人界における位置取り
就任講義
おわりに
訳者あとがき
人名索引
ピエール・ブルデュー
1930 - 2002
加藤春久
1935 -