共通善は common good であるので、翻訳では消えてしまっているけれども共通財とも常時かぶせて読んでくれというようなことが翻訳者側から注意として書かれていたような気がすることをルソーの講義では思い出した。
一般意志は共通善を意志するのですが、その共通善は共通の利益によって明確化されます。この場合に共通善とは、市民が共通の利益を達成することを可能にし支える社会的諸条件のことです。したがって、共通の利益がなければ、共通善も存在せず。よって一般意志も存在しないでしょう。
(講義Ⅱ 社会契約――諸仮定と一般意志(一)第三節「一般意志」 p452 )
「共通の利益」というのは、いまでいえば新型コロナウィルスをいち早くコントロール下に置き日常の復帰を目指すことなどが該当するもので、世界的な危機の状態にならないと容易には見えてこないものではないかと感じながら読んだ。あとは国際法とか地域で変動のない交換レートとか原子力規制とか温暖化規制とか廃棄物規制とかだろうか。気にしないでも成立しているものであればわざわざ「共通の利益」を考えなくても済んでいると思うので、考えざるを得ないということは状況的にはあまりよくないというか厳しいことを示しているのだと思う。意志してないと平穏は持続しませんよっていう圧の高いところから、意志の省力化が可能な生活スタイルにおだやかに変わっていって欲しい。
私たちが社会のなかで獲得する力は、社会のなかでしか使えない力ですから、賛同する他の人々の力と協調せずには使えない力です。(講義Ⅲ 一般意志(二)と安定性の問題 第四節「一般意志と安定性」p481 )
貨幣なんかはグローバルな商品経済のなか基本的に万人が賛同しているものであり、振り回されているものでもあるので、世界の側から強制力を持って協調せよと迫ってくるものはあんまりないほうが幸せなのかもしれない。
【チェック箇所】
388, 394, 399, 402, 404, 407, 410, 414, 416, 420, 440, 424, 438, 444, 446, 448, 451, 452, 465, 467, 469, 481, 483, 487, 488, 489, 493, 494
ロールズ『政治哲学史講義Ⅰ』(原書 2007, 岩波書店 2011, 岩波現代文庫 2020 )
※サミュエル・フリーマン編, 訳:齋藤純一, 佐藤正志, 山岡龍一, 谷澤正嗣, 髙山裕二, 小田川大典
ルソー
講義Ⅰ 社会契約――その問題
第一節 序 論
第二節 政治社会前史の諸段階
第三節 政治社会と政治的権威の段階
第四節 社会契約との関連
補遺A ルソー――人間本性の自然な善性の教義
補遺B
講義Ⅱ 社会契約――諸仮定と一般意志(一)
第一節 序 論
第二節 社会契約
第三節 一般意志
講義Ⅲ 一般意志(二)と安定性の問題
第一節 一般意志の観点
第二節 一般意志――法の支配、正義、平等
第三節 一般意志と道徳的・政治的自由
第四節 一般意志と安定性
第五節 自由と社会契約
第六節 ルソーの平等に関する諸観念――どの点に特色があるか
ジョン・ロールズ
1921 - 2002
ジャン=ジャック・ルソー
1712 - 1778