読書三昧(仮免) 禹歩の痛痒アーカイブ

乱読中年、中途と半端を生きる

【お風呂でロールズ】07.『政治哲学史講義』ミル(講義Ⅰ~Ⅳ)ミルの功利主義とロールズの公正としての正義(格差原理)の親和性

ロールズのミルの講義は、自身の考えとの近さゆえにほかの思想家よりも分量も多く自身の見解を深く織り交ぜながら展開されている。目指しているのはともに最大幸福の実現で、ミルの場合は効用原理、ロールズの場合は格差原理からのアプローチと、ことばは違うが非常に親和性があることが示されている。そしてこの二人の原理は、自由と自己統制下での各人の活動が最大の利益を生むという、分業の好ましい側面を思い出させてくれくれるところに大きな価値があるように思われた。

以下はミルの『自由論』からロールズが取り上げた引用。

各人の本性に十分な活動の余地を与えるためには、相異なった人間がそれぞれ相異なった生を生きるのを許されることが不可欠である。(ジョン・スチュアート・ミル『自由論』第三章第九段落)

この引用に対するロールズのコメントがこちら。

ここでミルの思想は、もう一つの観念を示唆していると思います。つまり、正義の権利を尊重することを含む自己統治の制限のなかで、もろもろの個性の自己発展の帰結として人間の多様性が生じるとき、自由な制度のもとで、その多様性はより大きな相対的価値を達成しうる、という観念です。
(講義Ⅳ 全体として見たミルの教説 第六節「個性との関係」 p626-627 )

人間の多様性よりも機械の多様性のほうが目立ったりして本当に多様性というものが一般的に出て来ているのだろうかとか、多様性というよりも専門性の拘束のほうが強くなったりして自由度はへっていないかとか、労働に関しては厳しい側面のほうに思いが行きがちだが、仕事であれ機械であれ「多様性はより大きな相対的価値を達成しうる」というのは分業の良い側面として意識にとめておいた方がよいのだろうと思った。

この辺のことについては作者が本文や原注でも促しているように『公正としての正義 再説』のほうにより詳細に展開されているようなので、そちらもいずれ参照しておきたい。

 

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【チェック箇所】
503, 512, 518, 525, 534, 542, 549, 569, 587, 593, 595, 598, 610, 613, 619, 621, 624, 625, 626,

ロールズ『政治哲学史講義Ⅱ』(原書 2007, 岩波書店 2011, 岩波現代文庫 2020 )
※サミュエル・フリーマン編, 訳:齋藤純一, 佐藤正志, 山岡龍一, 谷澤正嗣, 髙山裕二, 小田川大典

 

ミル
講義Ⅰ 効用についてのミルの考え方
 第一節 序言――ジョン・ステュアート・ミル
 第二節 ミルの功利主義の一つの読み方
 第三節 究極目的としての幸福
 第四節 明確な選好の基準
 第五節 明確な選好の基準についてのさらなるコメント
 第六節 ミルの根底にある心理学
講義Ⅱ 正義についてのミルの説明
 第一節 ミルに対する私たちのアプローチ
 第二節 ミルによる正義の説明
 第三節 道徳における正義の位置
 第四節 ミルにおける道徳的権利の特徴
 第五節 ミルの二面的基準
 第六節 他者と結びつこうとする欲求
講義Ⅲ 自由原理
 第一節 『自由論』(一八五九年)の問題
 第二節 ミルの原理についての予備的な論点
 第三節 ミルの述べる自由原理
 第四節 自然権(抽象的権利)について
 結 論
講義Ⅳ 全体として見たミルの教説
 第一節 序 論
 第二節 ミルの教説の枠組み
 第三節 人類の恒久的利益の最初の二つ
 第四節 他の二つの恒久的利益
 第五節 明確な選好の基準との関係
 第六節 個性との関係
 第七節 卓越主義的な価値の位置
 補遺 ミルの社会理論についての意見

ジョン・ロールズ
1921 - 2002
ジョン・スチュアート・ミル
1806 - 1873