読書三昧(仮免) 禹歩の痛痒アーカイブ

乱読中年、中途と半端を生きる

森政弘『ロボット考学と人間 ―未来のためのロボット工学―』( オーム社 2014 )ロボットと遊びと能動力

森政弘は「ロボットコンテスト」の創始者であり、「不気味の谷現象」の発見者。仏教に関する著作も持ち、たいへん懐が深い。ロボットとの関わり方は非常に日本的な繊細さにあふれており、わき上がる情熱とともに静謐な慈しみのこころが伝わってくる。

日本文化には、茶道、書道、絵画、建築、能……など、すべてにおいて枯淡という高く深いレベルがある。
この境地に達すると、道具はただのtoolとかinstrumentではなくなる。(中略)
「道具」は「道が具われり」と読むわけで、今後は道具関係者だけに限らず、広く物を取り扱う技術者全部がこの「道」を心得る必要が出てきた。
(第4章  設計への警告―幸せとは何か― 4.9「複雑化への警告」 6 物との会話と安全 p241 )

「針供養」や「付喪神」がある日本の文化伝統や精神をロボット工学の世界にも実践的に植え付けてきた業績は偉大である。厳しくも楽しい道具=ロボットを極めていく世界。無我夢中の能動力が仕事を遊びに昇華させている。

www.ohmsha.co.jp


目次:
序 章 「ロボット考学」とは何か
第1章  自然と人間から学ぶ、ロボット工学―ロボットの設計思想―
第2章  ロボットから考える、人間というもの―ロボットの哲学―
第3章  ロボットの世界―ロボット独自の発展を考察する―
第4章  設計への警告―幸せとは何か―
第5章  ロボコンに学ぶ―「技道」の哲学―
第6章  ロボット工学者へ―創造的な研究のために―

森政弘
1927 -