読書三昧(仮免) 禹歩の痛痒アーカイブ

乱読中年、中途と半端を生きる

セネカ『人生の短さについて 他二篇』( 岩波文庫 茂手木元蔵訳 1980 )酒には浸かる程度がよい

大西英文訳(2010)のひとつ前の岩波文庫。『心の平静について』『幸福な人生について』と収録作も同じ。余暇の時間と平穏な生活を荒らすことなく、この世の借り物としての生を堅実に遂行することを説いた三篇。モンテーニュが好み、彼のエセーでも踏襲している、無理のない自制の姿勢にほっとしながら読み通すことができる。

賢者は自分を無価値なものとは思わず――というのは自分は自分のものでないことを知っているから――あらゆることを勤勉に、また用意周到に行うであろう――あたかも神をあがめ神を信ずる者が、信託された財産を守るときにするように。(「心の平静について」 p97 )

信託されたものを運用して益を少しつけてお返しする。元本を毀損しないよう運用する行為のなかで、ほどよい陶酔と快楽も時に味わう。

 

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セネカ
B.C.1頃 - 65
茂手木元蔵
1942 - 1998