先週末、転居と引渡が完了した。都内隣接区で1Fから5Fへの移動。風の流れ方が違うんだなと単純に感じている。
引越しの荷造りで強制的な棚卸とBS圧縮が発生したため、まだ心ここにあらず感が強い。
箱詰めせずに転居前後の細切れ時間と落ち着かない精神状態を鎮めてくれた文庫本が数冊。
アラン『定義集』、岡倉天心『茶の本』『日本の覚醒』、『伊東静雄詩集』。
電子テキストではウィキソースの達磨『二入四行論』二入四行論 - Wikisourceの訓読文を繰り返し読んでいた。「壁観」「寂然無為」を思いつつ、契約と法にそった転居のための手続きをひとつひとつ順番にこなしていった。順序のある手続きの期限を待っている時間に余計なことを考えがちだったので、壁面九年の達磨の伝説や何種類かの慧可断臂図を思い起こしながら、東洋的な行為というのは基本何もしないということでよいと自分に言い聞かせて気持ちを落ち着かせていた。
西洋側からはアランのエスプリの利いた語の定義で思想の恩恵を受けた。
精神は、そのもっとも一般的意味において、すべてのことを冷やかすものである。
「ESPRIT 精神」P77
人間が理性を欠く行動をするのは、理性を使用することによってである。二人の人間のあいだで、それぞれが相手に、相手が誤っていると証明しようとする。それは相手を激高させる。それがはね返ってきて自分自身が激高する。
「ANIMALITÉ 動物性」P29
人生の半分以上がすでに確実に過ぎて、これから下り坂をすすんでいくことになると意識しはじめて、はじめての転居。区切りの転居でどうなることやら。まずは本の荷解きをして、新たな地で一冊の本を読み通してみることからはじめてみる。
住み替えて風吹きぬける五月尽
「五月尽」はフィクションだが、もう個人的には五月は尽きた感じだ。