読書三昧(仮免) 禹歩の痛痒アーカイブ

乱読中年、中途と半端を生きる

ディルタイ『近代美学史 ―近代美学の三期と現代美術の課題―』(原書 1892 岩波文庫 1960 )

摸倣論とは一線を画する美学。

現実の模写のみを事とする人達は聡明な人。卓れた観察者ならば彼を俟たずとも知つてゐるもの以外に何ひとつ教へはしない。彼等は疾うに芸術の言葉で語られたことを繰返す観念論者と大差はない。両者に生存の権利を与へるのものはただ一時の暇つぶしを求める退屈のみである。我々の覓めるものはその気力と力強さとが人間の視野を限りなく拡げるにふさはしいやうな美的印象である。
(二 当面の課題の解決に関する理念 「形式の言葉と芸術の規矩と」p67-68 )

技術による機械的に再現可能な制作物よりも、芸術家による一回的な生命活動による創作に重きを置く芸術論。摸倣を超える創造活動が付け加える人間的に有意味な造形世界の擁護。

 

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【付箋箇所】 

17, 42, 48, 53, 61, 67, 75, 79

 
目次:

一 従来の美学の三方法
 美的法則の自然的体系と十七世紀美学の方法
 唯理的美学の価値
 美的印象の分析と十八世紀美学の方法
 美的印象の分析の評価
 歴史的方法と十九世紀の美学
二 当面の課題の解決に関する理念
 創作と享受
 形式の言葉と芸術の規矩と
 自然主義
 現代の芸術

 

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