読書三昧(仮免) 禹歩の痛痒アーカイブ

乱読中年、中途と半端を生きる

ジョン・ミルトン(1608-1674)『闘士サムソン』(原書 Samson Agonistes 1671年, 小泉義男訳註 弓書房 1980)

『闘士サムソン』は、旧約聖書士師記』第一三章から第一六章までのサムソンとデリラペリシテ人たちとの詩句に取材したミルトン晩年の劇詩。復讐劇。妻に裏切られ政治的に敗北し投獄されたうえに盲目での生を余儀なくされたサムソンに、清教徒革命と王政復古の時代を生きたミルトン自身の境遇を重ねて謳いあげた凝縮され緊迫感のある傑作、全1758行。ページ数にして105。ただごとではない類似接近から闘士サムソンの復讐に重ねて自身の情念を鎮め昇華させることができたのではないかと思わせもする存在意義のある作品。

だが静かにしろ。わしは最も高い天の配剤の
意志を非難してはいけない。それはその中に
恐らくわしの理解出来ぬ目的があったのだから。
わしにはは身の破滅の原因(もと)であり、
あらゆるわしの様々な悲惨事の原因にばるとわかかるだけで沢山だ。
大変多く、又非常に大きいので、その出来事は一つ一つ
嘆き悲しむのに一生を要するだろう。だが、就中、
ああ、視力の喪失、わしには一番お前が不満だ!
敵の中で盲目であることが、ああ鎖より尚悪い、
土牢、乞食の境涯、老衰した年令よりも!
(60-69行)

ミリトン自身、過労のため1652年44歳の時に失明し、その19年後に『楽園回復』とともに出版された作品。どれほどの思いが詩句の後ろに込められているのか、想像をめぐらすほどに恐さも感じてくる作品。『失楽園』は岩波文庫で所有しているが、『楽園回復』(Paradise Regained)は図書館を利用してもなかなか辿りつけない作品。『闘士サムソン』がよかったので、『楽園回復』もぜひ読んでみたいと思っているところ。

ジョン・ミルトン
1608 - 1674
小泉義男
1921 -

 

参考:

uho360.hatenablog.com