読書三昧(仮免) 禹歩の痛痒アーカイブ

乱読中年、中途と半端を生きる

足立大進編『禅林句集』(岩波文庫 2009)

室町から江戸にかけて徐々に精練されていった禅語のアンソロジー『禅林句集』から抽出された全3410句からなる禅語導入書。

修行して悟りを得たいなどという思いはさらさらないのだが、気が軽くなるような気の利いた言葉に、あまり苦労することなく出会いたいという煩悩は、あふれんばかりにある。『碧巌録』や『臨済録』『無門関』を読むのはしんどいけれども、一字からいちばん長いもので二十八字に納まる禅語であれば、とりあえずはすらすら読みすすめていける。本文と訓み下し文だけで、現代語訳も解説もなしの編集方針なので、意味の分からぬ語句も多いといえば多い。しかしそこは読みとばして、機会があれば調べてみたり、原典に当たってみたりすればよいだけのことと納得しながら、いま沁みてくる言葉をピックアップするようにして読んでみた。

求心歇む処即ち無事。
しんやむところすなわちぶじ

意味することはよく分っていることではあるが、どうしたら求める心が歇んでくれるのかはよく分からない。自分にも世界にも無関心でありかつ熱狂しているような矛盾した境地に行けたら「無事」が輝きだすのかもしれないけれど、現時点では自分も世界も鈍色がかっていて、見通しが悪くて、まだ起こっていない有事を不安に思う時間が多い。

しみじみと孤独と不安をかみしめるのも有りかと思えるようになるまではまだ先が長そうで、だからといって大酒をくらって寝てしまうという長年の習慣も、そろそろ年齢的体調的に許されなくなりつつあることが分かってきたので、素面の夜の時間の過ごし方をいまから学んでいかなくてはならない。本好きではあるが本でしのげるかどうか。厄介な問題だ。

長く両脚を伸べて睡れば、偽も無く亦真も無し。
ながくりょうきゃくをのべてねむれば、ぎもなくまたしんもなし

素面で気持ちよく眠れる技能の開発を進めていかねばなるまい。

 

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足立大進
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参考:

uho360.hatenablog.com

uho360.hatenablog.com