読書三昧(仮免) 禹歩の痛痒アーカイブ

乱読中年、中途と半端を生きる

谷川俊太郎『東京バラード、それから』(幻戯書房 2011)

谷川俊太郎の写真60葉と詩作品90篇。

80歳の時の一冊。

写真は50年代、60年代のもの。東京タワーの建設中の風景を含むモノクロームの写真。

詩は、10代後半のものから書下ろしを含む刊行当時のものまでの60数年からのピックアップ。

バラードとうたわれているけれども、話が、話題が、読む意識を引っ張ってくれるわけではない。

それなのに、

ほとんど何もないのに、

最終的には300ページ近い言葉のパフォーマンスに、身を委ねていることが、可能になっている。


おそるべき軽さ。

なにもないと思うところのかたわらで、

なにものもなくさず、

そして消えずにある、

それぞれの、

「今ここ」の、

逃れられぬ力動のなかにある

姿が、

苦しさの層ではなく、

苦しさを辛うじて逃れた、

なにかが残って

微かに過去に

接続しようと

触手を伸ばしている。

 

巻頭エピグラフは1971年刊行『うつむく青年』収録「東京バラード」から

東京では 空は
しっかり目をつむっていなければ 見えない

東京では 夢は
しっかりと目をあいていなければ 見えない

 


なんにも見えないなか

かろうじて

部屋の中で

日本語の詩を

漢字かな交じりの詩を

読んでいる

今日このごろ

 

www.genki-shobou.co.jp


谷川俊太郎
1931 - 

参考:

uho360.hatenablog.com

uho360.hatenablog.com