読書三昧(仮免) 禹歩の痛痒アーカイブ

乱読中年、中途と半端を生きる

堀内進之助+吉岡直樹『AIアシスタントのコア・コンセプト 人工知能時代の意思決定プロセスデザイン』(ビー・エヌ・エヌ新社 2017)

AIアシスタントというのはスマートスピーカーのようなAIを利用するための仲介役をはたすデバイスやサービスのこと。IT業界に身を置いている立場上、ある程度の情報を入れておかないと話についていけなくなるので、情報収集と動向確認のため本書を手に取った。2017年ということで4年前の書物ではあるため、引用されている製品やサイト情報はすこし古さも感じさせるけれども、コンセプトとして提示されているテクスト本文は十分な鮮度を保っているように感じた。

新たなサービスとして人々の生活にどうのような価値を提供できるかを検討している。社会学者とIT系研究者兼プロジェクトマネージャという著者の組み合わせで、技術寄りの情報を期待して読むと肩透かしをくらうかもしれない。技術を使ってどのようなサービスをつくりあげていくかという、企画発想部分に重点が置かれている書籍であるからだ。

AIアシスト機能の究極の目的とは、「何を知らないか」を知っている事柄(未知)に対して、ユーザーの代わりに適切なキーワードを用いて検索し、回答してくれるだけではなく、ユーザーが「知らない」ことすら知らない事柄(非知)に対して、適切な回答を与えることだと言えます。
(2 STAGE―意欲前意欲後領域 30「検索エンジン 個人と情報を繋ぐインターフェイス」p75)

AIアシスト自体は巨大企業が生産開発し提供しているものであるし、新たなサービスを生みだそうとしているのも多くは営利目的の企業体であるので、いかに売るか、いかに需要を喚起するかという方向に多くのページが割かれているのは当たり前のことではあるのだが、需要のはっきりしないところに需要を創り出すことや意欲があるかどうかわからないところに意欲を生み出すことばかりに神経を向けるのも辛そうだなと感じてしまう。「非注意盲目性の緩和」。注意力を捨て去っている時間もいいものだと思うのでAIと生身の感覚が共存できるのが理想だろうか。何でも教えてもらって知らなくてはいけないということはないし、無関心化したなら撤退して他のものに眼を向けて見るのもいいのではないかというふうに考える自分が、商売に向いていないタイプだなということは、本書であらためて再確認できた。不活性状態にも愛着を感じる自分が、かなりお腹いっぱいになるくらいの情報は詰まっているので、意欲のある方には有用な本であるとは思う。

www.bnn.co.jp

【付箋箇所】
2, 3, 6, 17, 22, 24, 25, 29, 30, 44, 45, 51, 56, 62, 75, 82, 88, 101, 110, 112, 120, 122, 123, 128

目次:
1 SCOPE―いま何が起きつつあるのか
2 STAGE―意欲前意欲後領域
3 STRATEGY―戦略の来し方/行く末
4 SKETCH―フューチャー・ビジョン

堀内進之介
1977
吉岡直樹
1973

参考:

uho360.hatenablog.com

uho360.hatenablog.com