読書三昧(仮免) 禹歩の痛痒アーカイブ

乱読中年、中途と半端を生きる

監修 辻惟雄+太田彩『若冲原寸美術館 100%Jakuchu!』(小学館 2016)

代表作『動植綵絵』全30幅を、それぞれ全図とともに4ページに数点の原寸図版を掲載して紹介する贅沢なつくりの一冊。『動植綵絵』は、実寸ではそれぞれ140×80cm程度の絹本着色の作品で、本書の売りである原寸図版で見ると若冲の繊細緻密で没入しているにちがいない筆遣いが感じられ、たいへんよい。反復強迫との疑いも生まれそうな執拗で突出した図像の細部ではあるが、描かれた動植物を構成する線と色彩、そしてひとつひとつ異なる個体のやわらかくいつくしみ深い造形に、愛おしさと可笑しさを感じることができる。これも原寸で見てはじめてはっきり気づかされるところだろうと思う。小学館編集部がつけたという解説文は感嘆の声ばかり多くてすこし一本調子の感が否めないが、原寸で切り出した箇所の見るべきポイントと作品ごとの『動植綵絵』内での位置づけに関する指摘は的確で役に立つ。

現物でゆっくり見ることができるならそれに勝るものはないが、次善の鑑賞形態として本書でいろいろな見方を試してみるのもいいと思う。

www.shogakukan.co.jp

 

伊藤若冲
1716 - 1800
辻惟雄
1932 -
太田彩
1962 -

参考:

uho360.hatenablog.com