読書三昧(仮免) 禹歩の痛痒アーカイブ

乱読中年、中途と半端を生きる

藤原良経(1169-1206)『秋篠月清集』(1204 全1611首, 明治書院 和歌文学大系60 2013)

日本の和歌の現代的鑑賞は結構難しい。歌の姿が元のままであることは少ないし、元のままが現代的鑑賞にいちばん適しているとも言いづらいからだ。ひらがなで表示されれているか漢字で表示されているかで、同じ音であっても印象が異なるのが日本語の面倒なところであり豊かなところである。

今回、明治書院の谷知子校注による藤原良経私歌集『秋篠月清集』を、塚本邦雄の評論、筑摩書房日本詩人選23『藤原俊成・藤原良経』を導き手として並行して読んだのだが、谷知子と塚本邦雄の重点評価する歌の差異もさることながら、引用される藤原良経の歌の姿の違いが気にかかる。元の書字から読みやすさを考えて、双方ともに適宜漢字を宛てているのだが、谷知子に比べて塚本邦雄のほうがより漢字を選択していて、その分漢熟語による喚起力は塚本邦雄のほうがやはり強い。歌の選択のこだわりの強さもさることながら、その歌を味わう時の漢語優位の喚起力の高さというのも押さえておいた方がよいかと思った。ひらがなだと読みとばしてしまう可能性の高い語彙も、漢字でしっかりとより強めにイメージを喚起されると、同じ歌であっても響きかたは異なってくる。そこが日本語の不思議で興味深いところでもある。

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谷知子  螢飛ぶ野沢に茂る蘆の根のよなよな下に通ふ秋風
塚本邦雄 螢とぶ野沢にしげる蘆の根の夜な夜な下にかよふ秋風

この場合、個人的には谷知子の表記のほうが素通りしやすい。漢字の使用法として、動きあるものにひらがなをあてがっている塚本邦雄のほうが艶めかしく感じて、読み手に迫ってくる感じは強い。

 

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【付箋歌】
23, s34, 35, 75, 90, 197, 206, 225, 257, 295, 310, 333, 394, 432, 511, 533, 589, 591, 593, 596, 646, 713,751, 860, 896, 917, 976, 1077, 1142, 1207, 1295, 1360, 1425, 1430, 1453, 1489, 1499, 1519 1527, 1561, 1574, 1596

 

目次:

秋篠月清集 巻一:花月百首
秋篠月清集 巻一:二夜百首
秋篠月清集 巻一:十題百首
秋篠月清集 巻一:歌合百首
秋篠月清集 巻一:治承題百首
秋篠月清集 巻二:南海漁父百首
秋篠月清集 巻二:西洞隠士百首
秋篠月清集 巻二:院初度百首
秋篠月清集 巻二:院第二度百首
秋篠月清集 巻二:老若歌合五十首
秋篠月清集 巻二:句題五十首
秋篠月清集 巻三:[式部史生秋篠月清集上]春
秋篠月清集 巻三:[式部史生秋篠月清集上]夏
秋篠月清集 巻三:[式部史生秋篠月清集上]秋
秋篠月清集 巻三:[式部史生秋篠月清集上]冬
秋篠月清集 巻四:[式部史生秋篠月清集下]祝
秋篠月清集 巻四:[式部史生秋篠月清集下]恋
秋篠月清集 巻四:[式部史生秋篠月清集下]羈旅
秋篠月清集 巻四:[式部史生秋篠月清集下]雑
秋篠月清集 巻四:[式部史生秋篠月清集下]哀傷
秋篠月清集 巻四:[式部史生秋篠月清集下]無常
秋篠月清集 巻四:[式部史生秋篠月清集下]神祇
秋篠月清集 巻四:[式部史生秋篠月清集下]釈教


藤原良経
1169-1206
谷知子
1959 -