読書三昧(仮免) 禹歩の痛痒アーカイブ

乱読中年、中途と半端を生きる

プラトン『パルメニデス』(岩波書店 プラトン全集4 田中美知太郎訳) 読み通すと、なぜ岩波で文庫本になっていないのかが分かる奇作

パルメニデスを主人公にした対話篇。

年少のソクラテスアリストテレスに対する思考の準備運動の実践教育らしいが、字面を追うだけで精一杯。
文書で読んでいるからまだいいようなものの、話し言葉を耳で聞いて理解し対応するとなると至難の業。

一と多、有と非有、全体と部分、無限と有限の関連を、ある仮定から複数展開変奏させているのだが、真を追求している対話を想定していると、どこにも行き着かないで、頭が温まっただけで終わっていることに気づいて呆然とする。変わった対話篇。

パルメニデスの主な話しの受け取り手として単なる相づちマシーンと化している青年アリストテレスは、『形而上学』を書いたアリストテレスとは別の、プラトンによって仮構された人物。プラトンの対話篇のなかでもトップレベルを行く空っぽぶりに、読み手としては戸惑いすら覚える。

プラトン神秘主義の元になったとも言われるテキストで、現代的視点から見てもなかなかの前衛っぷりが味わえる。

分かろうとするよりも、まず、言葉の礫を身に浴びてみることに徹したほうが良いであろう作品。

 

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パルメニデス
紀元前5世紀前半ころ
ソクラテス
紀元前470年頃 – 紀元前399年
プラトン
紀元前427年 - 紀元前347年
アリストテレス
紀元前384年 - 紀元前322年
田中美知太郎
1902年 - 1985年