読書三昧(仮免) 禹歩の痛痒アーカイブ

乱読中年、中途と半端を生きる

秋山稔編『泉鏡花俳句集』(紅書房 2020)

和暦でいうと明治後期から昭和初期、西暦でいうと19世紀末から20世紀前半に活躍した幻想耽美文学の作家泉鏡花(1873-1939)の俳句544句を集めた一冊。私生活での行動と、感情や感覚の動きが、当時の日本の風物とともに、じんわり伝わってくる。

姥巫女(うばみこ)が梟抱いて通りけり
物干しの草鞋飛行く野分かな
蝙蝠や酒屋の軒に黄昏るゝ
矢叫(やさけび)や沖は怪しき五月闇
萍(うきくさ)の一つになりて流れけり

こうして気になるものを拾って並べてみると、泉鏡花の散文作品に通じる独自な世界があらわれてくるので、作家性というか感受性というものは不思議かつ面白いものだ。


泉鏡花
1873 - 1939
秋山稔
1954 -