読書三昧(仮免) 禹歩の痛痒アーカイブ

乱読中年、中途と半端を生きる

ジョーゼフ・キャンベル+ビル・モイヤーズ『神話の力』(原著 1988, 早川書房 飛田茂雄訳 1992)

スター・ウォーズ』のジョージ・ルーカスが大きな影響を受けたアメリカの神話学者ジョーゼフ・キャンベルに、ホワイトハウス報道官も務めたことのある先鋭博学のジャーナリストビル・モイヤーズが問いかける、知的興奮に満ちた対談集。生の冷酷な前提条件や廻り合う苦難といかに折り合いをつけるかを教える機能が神話にあると説くジョーゼフ・キャンベル。各地方の神話や宗教や儀式や伝説や民話など縦横に引き合いに出しながら、生き生きとした生を送るために各自の至福の追求を勧めるジョーゼフ・キャンベルは非常に魅力的。意識や自我の独裁が機械的な生に陥ることに注意喚起しながら、自我や人格といったものが個体(モナド)にとっては克服すべきものであると価値切り下げしているところなどはたいへん示唆的であった。

再生する個体(モナド)は東洋の神話では主要な英雄たちです。モナドは一生、また一生と、さまざまな人格を帯びます。そこで、再生というのは、いまの人格を持ったあなたや私がふたたび生まれ変わるということではありません。人格とはモナドが脱ぎ捨てるものです。そのあと、モナドは別の肉体を取る。男であるか女であるかは、時間領域における執着をきれいに断ち切るために、どういう経験が必要かに応じて決定されます。
(第2章 内面への旅 p116 )

東洋の転生神話について転生の主体が、人格とは別の自分以上のなんらかの個体(モナド)ということをこれほどはっきり読んだのは本書がはじめてだ。

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【付箋箇所(単行本)】
26, 34, 40, 46, 50, 52, 57, 74, 90, 93, 99, 104, 111, 112, 116, 134, 138, 143, 158, 160, 168, 179, 187, 189, 196, 205, 211, 216, 261, 264, 266, 288, 312, 332, 348, 350, 385, 398, 400, 406, 409

目次:
第1章 神話と現代の世界
第2章 内面への旅
第3章 最初のストーリーテラーたち
第4章 犠牲と至福
第5章 英雄の冒険
第6章 女神からの贈り物
第7章 愛と結婚の物語
第8章 永遠性の仮面

ジョーゼフ・キャンベル
1904 - 1987
ビル・モイヤーズ
1934 -
飛田茂雄
1927 - 2002