読書三昧(仮免) 禹歩の痛痒アーカイブ

乱読中年、中途と半端を生きる

1929年のイギリスのエディンバラ大学のギフォード講義録 ジョン・デューイ『確実性の探究 知識と行為の関係についての研究』(原著 1929, 東京大学出版会 2018)

ハイゼンベルク不確定性原理(1927年)以後、量子力学以後の哲学としてのデューイのプラグマティズム。確固とした真理を前提するのではなく、知性の活動の蓄積と不断の検証による改善によって生み出された実用的な成果にその都度満足すること。不確実性や偶然性がもたらす危険を制御可能な領域にとどめながら、行為の自由を手にすること。自然と社会が変化していく時間の進行のなかでの方向づけを途切れることなく飛躍することなく実践しつづけていくことが哲学の役割であることが説かれている。

哲学が行う確実性の探究において、進行する自然過程に不確実なものが実在することを無視すると、確実性の探究が起きる条件を否定することになる。理論的に確実なものがきっちり支配する内部に、疑わしいものすべてを包含しようとするのは、不誠実さと責任逃れに加担しているのであり、結果的に内部矛盾という烙印を押されるだろう。
(第9章「方法の卓越性」 p198 )

横書きでページ当たり30行、270頁におよぶ全11講の論考は、ボリューム的には岩波文庫の『哲学の改造』の倍くらい。より広範囲で明晰な主張を感じとることができるので、デューイのプラグマティズムのイメージをつかむには『哲学の改造』と併せて読むとよい。

www.utp.or.jp

 

【付箋箇所】
5, 10, 15, 20, 21, 37, 43, 46, 49, 53, 57, 60, 63, 68, 72, 5, 78, 79, 81, 84, 88, 108, 110, 120, 127, 131, 133, 151, 152, 168, 181, 183, 187, 191, 193, 198, 201, 203, 254, 268241, 246, 

 

目次:

解題 『確実性の探求』によせて(田中智志)
第 1章 危険の回避
第 2章 不変なものへの哲学の探求
第 3章 権威の対立
第 4章 変容の探究と制御の探求
第 5章 作業する概念
第 6章 観念の自由な働き
第 7章 知的権威の座
第 8章 知性の自然化
第 9章 方法の卓越性
第10章 善の構成
第11章 コペルニクス的転回
訳者解説(加賀裕郎)

 

ジョン・デューイ
1859 - 1952