読書三昧(仮免) 禹歩の痛痒アーカイブ

乱読中年、中途と半端を生きる

山田雄司『怨霊とは何か 菅原道真・平将門・崇徳院』(中公新書 2014)

日本三大怨霊と称される三人を軸に、中世から現代にいたるまでの日本人の怨霊観と鎮魂文化を解き明かそうとする一冊。著者は日本古代・中世信仰史を専門とする歴史学者で、現三重大学教授。おどろおどろしさを期待するとすこし趣向が違っていてがっかりする人もいるかもしれない。

菅原道真は『北野天神縁起』、平将門は『将門記』、崇徳院は『保元物語』を中心に、脚色された物語中の人物と史実のなかから浮き上がってくる人物の双方に目を配り、いかに人々のあいだに怨霊として定着していったのか、そしてそのように鎮魂されてきたのかを、人々の心情と政治的な意図から分析し解説している。政治的な敗者の復権により乱れたバランスを回復させ安心を得るとともに、定期的に鎮魂の儀礼をくりかえすことで、事態の推移のなかで起こりがちな一方的な行きすぎを抑制するはたらきがあることを、各ケースで明らかにしていっている。

私が本書を読んで個人的に思ったことは次のような感じ。
・怨霊化するには物語が必要で、史実よりも脚色されたその物語のほうに人は引きつけられていく傾向がありそう
・怨霊に対して神社まで作って後々まで崇めていくという傾向のほうが権力がより絡んでいそうでちょっと怖い
平将門は武人なので該当しないが菅原道真崇徳院は自作の詩作品を読んであげたほうが鎮魂となると思うのだが、事実としてはそうはなっていないし今後もそうなりそうもないのはちょっと残念。天満神社では菅原道真の家集『菅家文草』『菅家後集』を文庫化して売ってくれたらいいと思うのだが、そういうことは現実化はしない。

 

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【付箋箇所】
42, 54, 62, 67, 71, 72, 80, 84, 88, 89, 99, 104, 123, 132, 134, 136, 141, 146, 151, 156, 167, 178, 179, 199, 200

目次:
第1章 霊魂とは何か
第2章 怨霊の誕生
第3章 善神へ転化した菅原道真
第4章 関東で猛威をふるう平将門
第5章 日本史上最大の怨霊・崇徳院
第6章 怨霊から霊魂文化へ

山田雄司
1967 -
菅原道真
845 - 903
平将門
903 - 940
崇徳院
1119 - 1164