読書三昧(仮免) 禹歩の痛痒アーカイブ

乱読中年、中途と半端を生きる

『玉葉和歌集』(第十四勅撰和歌集 伏見院下命、京極為兼撰、1321年成立 明治書院和歌文学体系39、40 中川博夫著 2016,2020)

定家晩年の主張を引き継いだ平明流麗な歌を良しとする主流の二条派に対して、心のはたらきを重視し、それに見合う言葉を生み出すことを主張し、新たな和歌表現をもたらした、京極為兼を中心とする京極派が、京極派の歌人でもある伏見院が実権を握った時を見て、早急に編まれた勅撰集。

21ある勅撰和歌集のなかで最大の2800首を収め、万葉集時代の歌から前勅撰集の時代までの埋もれて採られることのなかった秀歌の数々と最新の京極派の歌までを、京極為兼の冴えわたった編集で、興味深く読みすすめることができる最新オールスター的詞華集。『新古今和歌集』に込められた美学への称賛を惜しまない前衛歌人塚本邦雄も、『風雅和歌集』とともに評価する、八代集以後の勅撰集のなかで質の高い撰集。

代表的な歌人は伏見院、永福門院、京極為兼、京極為子、西園寺実兼など。修辞のない平易な言葉を用いながら生き生きとした心の動きをとらえて詠いあげる歌風は、四代前の定家のいた『新古今和歌集』やそれ以前の時代の言語感覚から抜け出て、新しさとともに軽さを持った世界を作り上げている。当時異端とも言われた京極派の新しさが、今読んで容易に想像できるのは、やはりすごいことなのだと思う。

永福門院
木々の心花近からし昨日今日世はうす曇り春雨の降る
京極為子
あはれにもこと遠くのみなりゆくよ人の憂ければ我も恨みて
京極為兼
言の葉に出でし恨みは尽き果てて心にこむる憂さになりぬる

 

www.meijishoin.co.jp

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【付箋歌】
16, 33, 65, 68, 80, 121, 132, 164, 232, 240, 286, 332, 377, 397, 407, 417, 484, 509, 552, 589, 603, 618, 643, 695, 725, 731, 803, 847, 879, 899, 903, 909, 934, 936, 949996, 1022, 1036, 1075, 1230, 1246, 1351, 1376, 1483, 1496, 1527, 1551, 1624, 1647, 1691, 1705, 17061720, 1723, 1767, 1774, 1779, 1793, 1803, 1804, 1870, 1871, 1875, 1884, 1911, 1932, 1953, 1956, 1991, 2028, 2050, 2056, 2059, 2060, 2064, 2123, 2159, 2168, 2227, 2241, 2249, 2252, 2253, 2256, 2264, 2293, 2299, 2368, 2419, 2443, 2543, 2559, 2578, 2589, 2679, 2688, 2721, 2722, 2769, 2798 

伏見院
1265 - 1317
京極為兼
1254 - 1332