読書三昧(仮免) 禹歩の痛痒アーカイブ

乱読中年、中途と半端を生きる

笹川博司『三十六歌仙の世界 ―公任『三十六人撰』解読―』(風間書房 2020)

藤原公任(966-1041)の『三十六人撰』に選ばれている36人150首についての口語訳と解説に、大阪大谷大学図書館蔵『三十六歌仙絵巻』の歌仙絵の紹介を付けてまとめた著作。『三十六歌仙絵巻』は江戸中期に写されたもの。
36人150首の選択基準が著者自身の見解含めて書かれていないので、本書だけから公任の思いをうかがい知ることは難しい。疑問や消化不良を持ったまま、それでも感心の芽や探究のきっかけを残してくれたということで、逆に読後感の余韻が深まる。
柿本人麻呂紀貫之凡河内躬恒、伊勢r平兼盛、中務がそれぞ10首、それ以外の歌人はそれぞれ3首。
伊勢―中務の親子10首撰がやはり目立つ。

伊勢:
人しれずたえなましかばわびつつもなきなぞとだにいふべきものを

中務:
さけばちるさかねばこひし山ざくらおもひたえせぬはなのうへかな

まあ、簡単に理解できましたと言われたら、胡散臭いとおもわれるだけの背景は用意してくれている。

www.kazamashobo.co.jp

【付箋箇所】
4, 5, 15, 29, 43, 67, 82, 89, 98, 128, 136, 143, 152, 196, 205, 221, 237

目次:

柿本人麻呂紀貫之
凡河内躬恒・伊勢
大伴家持山部赤人
在原業平僧正遍昭
素性法師紀友則
猿丸大夫小野小町
藤原兼輔藤原朝忠
藤原敦忠藤原高光
源公忠壬生忠岑
斎宮女御大中臣頼基
藤原敏行源重之
源宗于源信明
藤原清正・源順
藤原興風清原元輔
坂上是則藤原元真
小大君藤原仲文
大中臣能宣壬生忠見
平兼盛・中務

歌題一覧

笹川博司
1955 -
藤原公任
966 - 1041