藤原公任(966-1041)の『三十六人撰』に選ばれている36人150首についての口語訳と解説に、大阪大谷大学図書館蔵『三十六歌仙絵巻』の歌仙絵の紹介を付けてまとめた著作。『三十六歌仙絵巻』は江戸中期に写されたもの。
36人150首の選択基準が著者自身の見解含めて書かれていないので、本書だけから公任の思いをうかがい知ることは難しい。疑問や消化不良を持ったまま、それでも感心の芽や探究のきっかけを残してくれたということで、逆に読後感の余韻が深まる。
柿本人麻呂、紀貫之、凡河内躬恒、伊勢r平兼盛、中務がそれぞ10首、それ以外の歌人はそれぞれ3首。
伊勢―中務の親子10首撰がやはり目立つ。
伊勢:
人しれずたえなましかばわびつつもなきなぞとだにいふべきものを
中務:
さけばちるさかねばこひし山ざくらおもひたえせぬはなのうへかな
まあ、簡単に理解できましたと言われたら、胡散臭いとおもわれるだけの背景は用意してくれている。
【付箋箇所】
4, 5, 15, 29, 43, 67, 82, 89, 98, 128, 136, 143, 152, 196, 205, 221, 237
目次:
柿本人麻呂・紀貫之
凡河内躬恒・伊勢
大伴家持・山部赤人
在原業平・僧正遍昭
素性法師・紀友則
猿丸大夫・小野小町
藤原兼輔・藤原朝忠
藤原敦忠・藤原高光
源公忠・壬生忠岑
斎宮女御・大中臣頼基
藤原敏行・源重之
源宗于・源信明
藤原清正・源順
藤原興風・清原元輔
坂上是則・藤原元真
小大君・藤原仲文
大中臣能宣・壬生忠見
平兼盛・中務
歌題一覧
笹川博司
1955 -
藤原公任
966 - 1041