読書三昧(仮免) 禹歩の痛痒アーカイブ

乱読中年、中途と半端を生きる

藤原公任『和漢朗詠集』(成立 1031, 大曽根章介、堀内秀晃 校注 新潮日本古典集成 1983 )

和歌216首、漢詩588詩からなる藤原公任による秀歌秀句アンソロジー。『三十六人撰』の選出とともに後世に大きな影響を与えた選集。実際に読んでみると、おおらかで伝統的な詠いぶりを選んだ、王道を外れない、当時の保守的な詩歌の頂点を選りすぐった、必須の参考文献というところに落ち着く古典。
公任撰の『三十六人撰』の選歌を読み通しても感じることは、時代風潮を越えた斬新な歌風はそれほど重要視せず、万人に受け入れられるであろう秀歌を重視している姿勢。物足りないというよりも、その当時における最先端の保守的姿勢に、ブレることなく一貫して徹している様子がうかがわれて、安心して読める。

古今和歌集における撰歌とは異なる批評精神の現れとして押さえておくべき一冊で、特に漢詩への参照についてはよく見るべきものとしてある。忘れてはいけない古典作品。

全803句。繰り返し読みすすめるうちに、参照作品としての分量としては、全く苦にならない分量であることに気づくと、すこし驚く。

いずれにせよ、複数回読んで自分なりの解釈を持たないと、各方面から指摘が止まないであろう、自分なりの選歌にならざるを得ない読書を強いる選集であると思う。

とりあえず、今、気にかかる詩歌に印をつけることで、今後につながりそうな痕跡を残しておく。

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【付箋歌】
126, 144, 175, 233, 291, 328, 329, 331, 353, 360, 442, 482, 5117, 542, 563, 586, 588, 615, 730, 759, 790, 791, 793


藤原公任
966 - 1041