シングルマザーとして出産・育児をする中で詠まれた現代日本の短歌。
俵万智の第四歌集と第六歌集。
同世代の歌人のなかで途切れることなく歌集を出しつづけ、商業的にも失敗していないところはやはりすごい。
根本にある奔放さと冷徹さがすこし浮世離れしていながら、いいバランスで薫ってくるところが良いのだろう。
出産前後を詠った『プーさんの鼻』と小学生から高校生へと成長していく時期の『未来のサイズ』では、子供を詠う頻度と距離感において『プーさんの鼻』が圧倒的に濃く、秀歌も多いような気がした。
『未来のサイズ』は、子供が成長し、自分とは違う人生を歩みはじめていることへの感慨とともに配慮もあって、詰めない距離感が感じ取れるところに好感が持てた。
親離れ子離れの時期に60代を迎えて、さてこれからの歌がどういうふうに変わっていくのか、少し期待もさせる歌集二冊であった。
『プーさんの鼻』
耳はもう聞こえていると言われればドレミの歌をうたってやりぬ
ろうそくの炎初めて見せやれば「ほう」と原始の声をあげたあり
うたおうよぴっとんへべへべ春の道るってんしゃんらか土踏みしめて
『未来のサイズ』
動詞から名詞になれば嘘くさし癒しとか気づきとか学びとか
俵万智
1962 -