読書三昧(仮免) 禹歩の痛痒アーカイブ

乱読中年、中途と半端を生きる

堀田彰『人と思想 6 アリストテレス』(清水書院 1968, 2015)

先日読んだ『人と思想 83 エピクロスとストア』が良かったので、同じ著者の『人と思想 6 アリストテレス』にも手を出してみた。対象がアリストテレスという大きな存在であるために、思想全般を扱おうとすると凝集度についてはやや落ちている印象があるが、それでも学説の紹介に終始する単なる入門書ではなく、著者自身が哲学しているところが爽快な一冊。

論理学や第一原理の章は分量の制約もあって簡潔にまとめられてはいるもののかなり難解ではあるが、それでもアリストテレスの実際の著作に入り込むための助けとなるところが多く、ありがたい。

できればもっと大きな著作で学恩に与りたい人物なのだが、あまり著作は多くなく、図書館にも清水書院の人と思想シリーズの二冊があるばかりなのは、たいへん残念。手に取ることができるものを何度か読み返すことで業績に親しみ、満足感を高めていきたいと思わせる人物であり著作であった。

すべてのものは、可能性の点からみれば存在しているが現実性の点からみれば存在していないものから、生ずる。とはいえ、可能的に存在するものが、現実化に際して、任意のものとなるというのではない。可能性とはいつもあるきまったものになりうることなのである。したがって、非存在とは可能的には存在するもので、つまりは形相の欠如態と考えられよう。ここに、感覚的実体について、形相・欠如・質量の三原理が立てられることになった。
(「アリストテレスの第一原理」より 太字は実際は傍点)

www.shimizushoin.co.jp

【付箋箇所】
24, 43, 57, 62, 65, 86, 91, 131, 145, 149, 151, 153159, 164, 168, 169

目次:
アリストテレスについて
Ⅰ アリストテレスの生涯と著作
  生涯
   伝記の資料とアカデミー入学まで
   アカデミーの学員時代
   遍歴時代
   巨匠時代
  著作
   アリストテレスの著作についての伝承と編集
   アリストテレスの著作と発展史的研究
Ⅱ アリストテレスの思想
  論理学
   倫理学の諸要素
   アリストテレス倫理学の意義
  第一原理
   プラトンとの比較において
   アリストテレスの第一原理
  イデア論の批判
   イデア論の批判の時期について
   イデア論批判の主要点
  自然の根本現象
  人間の生活
   倫理学
   政治学
  アリストテレス存在論
   存在としての存在の探求
   実体論

アリストテレス
BC384 - BC322
堀田彰
1918 - 1993