読書三昧(仮免) 禹歩の痛痒アーカイブ

乱読中年、中途と半端を生きる

原田マハ+ヤマザキマリ『妄想美術館』(SB新書 2022)

美術を愛する作家二人によるアート談義。両人ともにエピソードが常人離れしているので、短いパッセージのなかに情報と情動が凝縮されていて、読み手は凝視せざるをえない。さらに、編集部の優れた仕事振りが伺える注記と図版による補完体制が質量ともに充実していて、手引書のような使い方もできる、ちょっと変わった印象を与えてくれる新書に仕上がっている。

印象派から20世紀にかけての王道絵画を推している原田マハにくらべ、自身も絵描きであるヤマザキマリの生き方まで左右してしまっている古典から現代にかけてのクセのある芸術家たちの紹介のほうがインパクトがあり、対談の流れもつくっているような印象があった。やはり本を読むからには自分の知らない切り口で美術作品を紹介してくれることを期待してしまうので、いかにも日本人的な好みの原田マハよりも、少々ぶっ飛んでいるヤマザキマリのほうが面白い。

ネット上で検索して代表作を見てみると知っていることの方が多い画家たちではあるが、ヤマザキマリが取り上げる画家たちの名前を並べてみると、美術の世界の幅の広さと奥行きの深さが浮かび上がってくる。

神田日勝
ジョット・ディ・ボンドーネ
アントネロ・ダ・メッシーナ
ヤン・ファン・エイク
パオロ・ウッチェロ
ピエロ・デッラ・フランチェスカ
ジョバンニ・ベッリーニ
ヴィットーレ・カルパッチョ
アンドレア・マンテーニャ
エドワード・ホッパー
ジョーダン・ベルソン(この人は映像作家)
ジョルジョ・モランディ
アントニオ・リガブエ

ヤマザキマリ自身もそうだが、個性的な人物たちである。

www.sbcr.jp


目次:
第1章 美術館は快楽の館
第2章 終わりなきアートの迷宮
第3章 偏愛するアーティストたち
第4章 未完の魅力への憧れ
第5章 マニアックな情熱ゾーン
第6章 心ゆさぶるアート空間

原田マハ
1962 - 
ヤマザキマリ
1967 -