読書三昧(仮免) 禹歩の痛痒アーカイブ

乱読中年、中途と半端を生きる

ポール・ヴェルレーヌ『呪われた詩人たち』(原著 1884,1888 倉方健作訳 幻戯書房 2019)

40歳台前半、詩人としても一人の人間としても地に堕ちていた時代のヴェルレーヌの仕事。この『呪われた詩人たち』がなかったらランボーが忘れ去られていたかもしれないことで歴史的に重要な作品。ヴェルレーヌ自身もこの著作によって詩人としての立場が上向いてきたこともあるので、埋もれた詩人たちを紹介するという仕事も大切な仕事であり、世の中に必要な出来事でもあるというひとつの例となっている。
内容的には解釈をしっかり書き込んだ批評作品というよりは、世に出まわっていない詩作品を拾い集めたアンソロジーに近い。マラルメ宛てにできれば印刷されていない未知の作品があれば提供してくださいという依頼の手紙を書いて、その返信で送られてきた詩作品をそのまま引用掲載しているような具合なので、しっかりとした構想の下に出来上がった書物とは到底言えないのだが、収録されている詩作品の新鮮さによって広範囲に影響を与える奇蹟的な一冊になった。
収録されているのはトリスタン・コルビエール、ランボーマラルメマルスリーヌ・デボルド=ヴァルモールヴィリエ・ド・リラダンに哀れなルリアンとして紹介されたヴェルレーヌ自身。
ヴェルレーヌの一風変わった作品選択でランボーマラルメの詩を新訳で読むのはなかなか味わい深いものがあった。刊行当時の同時代人を挑発するようなヴェルレーヌの意図にのりながら、まずは気軽に読んでみるのがいいと思う。

 

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目次:
緒言 掲載の肖像について
1 トリスタン・コルビエール
2 アルチュール・ランボー
3 ステファヌ・マラルメ
4 マルスリーヌ・デボルド=ヴァルモール
5 ヴィリエ・ド・リラダン
6 哀れなルリアン

ポール・ヴェルレーヌ
1844 - 1896
倉方健作
1975 -