読書三昧(仮免) 禹歩の痛痒アーカイブ

乱読中年、中途と半端を生きる

ユルギス・バルトルシャイティス『幻想の中世 ゴシック美術における古代と異国趣味』(原著 1981, 1993 訳:西野嘉章 平凡社ライブラリー 新版 2023, 旧版 1998, リブロポート 1985)

ヒエロニムス・ボスやピーテル・ブリューゲルのなかに登場する数々の異形の生き物たち、それらには彼等の想像力が独自に生み出した部分もあるだろうが、多くは先行する図像の数々があった。中世西欧が古代形象や東方アジアの文化に触れて、その美術工芸のイメージ群を取り入れること中世の西欧文化が変化形成されていったというところが実情のようである。本書は多くの図版を引きながら中世西欧の図像文化を異なる文化との接触交配から説いていく刺激的な書物。ヒエロニムス・ボスとそ同時代人である土佐光顕の「百鬼夜行図」が同じページに取り上げられるというような斬新な試みがあふれている。中国の絵画ではよく李龍眠の画が印象紹介されていて、どれも魅力的で自分で画集を探して鑑賞してみたくなるほどのものなのだが、ネット上でいろいろ検索してもはかばかしいものがでてこない。そんなところからも著者であるバルトルシャイティスの驚異的な博識洽聞の様子が知れる。解説をこれまた博覧強記の荒俣宏が書いていて、バルトルシャイティスの論考を現代日本側の視点から補強しているところも、びっくりするほどはまっている。学問的というよりもまずは読者の単なる好奇心に訴えかけるような驚きの情報満載の楽しい書物。

 

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【目次】
第1章 ゴシックのグリロス
第2章 印章と古銭の奇想
第3章 イスラームのオーナメントと装飾枠
第4章 幻想的アラベスク
第5章 蝙蝠の翼手と中国の鬼神
第6章 東アジアの驚異
第7章 大いなる仏教的主題
第8章 東洋の蓮華アーチ

【付箋箇所】
10,  14, 21, 57,  79,  107,   119,  201,  215,  221,  226,  230,  277,  283,  287,  306, 307,  313,  321, 349,  354,  368, 370,  376,  386,  389, 391,  439,  471,  494,  514,  517,  532,  539

ユルギス・バルトルシャイティス
1903 - 1988

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西野嘉章
1952 - 

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