「夜のミッキー・マウス」「朝のドナルド・ダック」「詩に吠えかかるプルートー」「百三歳になったアトム」とアニメのキャラクターが登場する四詩篇からはじまるこの詩集は、『ペンギン村に陽は落ちて』から『さようならクリストファー・ロビン』にいたる高橋源一郎の連作短編集の幾冊かをなんとなく思い浮かばせる。楽屋裏に帰った疲労気味のキャラクターたち。それを何度かくりかえし読む疲労気味の読者たる私。
宇宙の始まりもおのが人生の終わりも
脳のどこかに突っ込んだまま忘れてしまって
日々は牛の涎のようにだらだらと続く
(「詩に吠えかかるプルートー」p19)
どうにも冴えない状況にあるが、現状確認して少し唸りながら明日も生きる。うまく動かなくても口と手と頭がある。
谷川俊太郎
1931 -