空海晩年の円熟した著作として解釈を施している著作。
般若心経を五分割し仏教各派の教えに対応づけていることを図示している137頁と、各所で指摘されている呪文としての経文の優位傾向性を取り上げているところが特徴の書物。
論理よりも呪力による世界変革が優位にあるという思考に基づいている原著を確認するところの著作であるが、般若心経をその呪術的思考を成立たせるための厳密な論理的思考の基盤を説いている凝縮された経典であることを丁寧に跡づけている、現代的な理性に寄り添うような面を持ち合わせる書物である。
何ものをも排除せずに見るところが空であるという空観から、色即是空空即是色を説いているところだけでも見ておくべきところはある。
【目次】
はしがき
第I部 著作解説
一 宝の蔵を開く
二 『般若心経秘鍵』の特色
三 法より人
四 密教の包容性
五 『般若心経』とは
六 『般若心経秘鍵』の著作
七 『般若心経秘鍵』の構成
第II部 本文解説
一 序
二 正宗分『般若心経』の全体像
三 『般若心経』の五分科
四 行人得益分
五 総帰持明分
六 秘蔵真言分
七 問答形式の補説
八 流通分
九 上表文
付録 般若心経に聞く
【付箋箇所】
21, 31, 35, 49, 59, 67, 70, 125, 137, 143, 145, 187, 206, 付8, 25
空海
774 - 835
松長有慶
1929 -